肥満予防のナッジ ナッジの利点と限界,そしてその克服

本稿はナッジによる健康行動促進とその限界や克服方法をテーマに,先行研究を交えて考察することを目的とする。多くの人は認知バイアスに影響されるため,健康の大切さを理解していても行動を先送りする傾向がある。このような人たちが健康行動できるように支援する手法としてナッジがある。ナッジの利点として「エビデンスに基づき相手に合った介入方法が推定可能」「高い費用対効果」が挙げられる。一方,「ナッジは隠匿的」といった批判が寄せられ,さらに「ナッジでは行動定着できるほどの効果が期待できない」といった弱みがある。これらの問題に対しては「ナッジの内容の明示」「ナッジと情報提供の組み合わせによるヘルスリテラシー向上」...

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Published in医療と社会 Vol. 35; no. 1; pp. 25 - 34
Main Author 竹林, 正樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 医療科学研究所 28.04.2025
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ISSN0916-9202
1883-4477
DOI10.4091/iken.35-25

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Summary:本稿はナッジによる健康行動促進とその限界や克服方法をテーマに,先行研究を交えて考察することを目的とする。多くの人は認知バイアスに影響されるため,健康の大切さを理解していても行動を先送りする傾向がある。このような人たちが健康行動できるように支援する手法としてナッジがある。ナッジの利点として「エビデンスに基づき相手に合った介入方法が推定可能」「高い費用対効果」が挙げられる。一方,「ナッジは隠匿的」といった批判が寄せられ,さらに「ナッジでは行動定着できるほどの効果が期待できない」といった弱みがある。これらの問題に対しては「ナッジの内容の明示」「ナッジと情報提供の組み合わせによるヘルスリテラシー向上」によって解決が期待される。食行動改善においては,デフォルト変更が最も効果が高いが,倫理的議論が生じやすい。これに対し,ナッジと情報提供を組み合わせた上でコミットメントを促すことが有効と示唆される。身体活動は開始までのプロセスが長いため,ボトルネックが生じやすくなる。これに対しては,健康アプリによるヘルスリテラシー向上で克服できそうだ。体重測定のようなセルフモニタリングは肥満予防に高い効果があると報告されているが,ナッジを用いた事例が少なく,研究の蓄積が求められる。
ISSN:0916-9202
1883-4477
DOI:10.4091/iken.35-25