くも膜下出血と多発性脳梗塞を併発した1例 振動刺激療法と課題特異型アプローチが奏功した症例

【はじめに】今回,くも膜下出血(以下SAH)と多発性脳梗塞を発症後,正常圧水頭症や腸炎等を併発し,治療が遷延化した症例を担当する機会を得た。振動刺激療法や起立・歩行に関する課題特異型アプローチを中心とした治療を行い,実用歩行に至ったので,経過を報告する。【症例紹介】40歳代女性。診断名:SAH(内頸動脈瘤破裂,Fisher分類Group4,Hunt&Kosnik Grade4~5)合併症:多発性脳梗塞(左被殻部,左前・後大脳動脈領域に多数梗塞巣あり)【経過】SAHおよび多発性脳梗塞発症後,A病院に入院。翌日,コイル塞栓術施行。8週経過時,当院入院。当院入院時,重度右片麻痺(Brunnstrom...

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Published in九州理学療法士学術大会誌 p. 81
Main Authors 衛藤, 誠二, 福村, 俊之, 阿多, 昌幸
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会 2019
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ISSN2434-3889
DOI10.32298/kyushupt.2019.0_81

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Summary:【はじめに】今回,くも膜下出血(以下SAH)と多発性脳梗塞を発症後,正常圧水頭症や腸炎等を併発し,治療が遷延化した症例を担当する機会を得た。振動刺激療法や起立・歩行に関する課題特異型アプローチを中心とした治療を行い,実用歩行に至ったので,経過を報告する。【症例紹介】40歳代女性。診断名:SAH(内頸動脈瘤破裂,Fisher分類Group4,Hunt&Kosnik Grade4~5)合併症:多発性脳梗塞(左被殻部,左前・後大脳動脈領域に多数梗塞巣あり)【経過】SAHおよび多発性脳梗塞発症後,A病院に入院。翌日,コイル塞栓術施行。8週経過時,当院入院。当院入院時,重度右片麻痺(Brunnstrom recovery stage(以下BRS)II),前頭葉症状(強制把握等),認知機能低下(HDS-R 8点)等を認め,基本的動作や日常生活動作はほぼ全介助レベル。9週経過時,正常圧水頭症に対し,V-Pシャント施行。活動能力の改善を認めていたが, 14週経過時,発熱や腹痛の訴えがあり,感染性腸炎でA病院へ転院。A病院にてV-Pシャント抜去およびL-Pシャント術施行。22週経過時,当院再入院。 再入院時,右片麻痺(BRS II~III,Fugl-Meyer Assessment下肢項目(以下FMA-LE)6/34点,modified Ashworth scale(以下MAS)右下腿三頭筋2レベル),HDS-R16点,前頭葉症状は改善を認めるも残存し,高次脳機能障害(注意・記憶)あり。活動レベルは機能的自立度評価法の運動項目(以下FIM-M)36点,歩行は,平行棒と長下肢装具を着用し,振り出しに介助を要していた。 本症例に対し,右下腿三頭筋の痙性麻痺に対する振動刺激療法や,促通反復療法,起立・歩行練習を中心に治療介入を行った。 再介入開始2週(発症後24週)で,右下腿三頭筋MAS1へ改善し,開始4週(発症後26週)で短下肢装具(以下AFO)とロフストランド杖での歩行が腋窩介助レベルになった。しかし,右足底~足尖接地を認めたため,踵接地のステップ練習の反復を行った。開始10週(発症後32週)頃より,足尖接地は認めず,踵~足底接地が可能となった。開始14週(発症後36週)時,AFOとT字杖使用にて病棟内歩行許可。以後,転倒することなく,開始22週(発症後44週)後,自宅退院となった。 退院時の身体機能は,右片麻痺(BRS II~III,FMA-LE8/34点,右下腿三頭筋MAS1レベル),HDS-R30点,前頭葉症状陰性,高次脳機能障害は改善するも残存。活動レベルは,FIM-M87点で,歩行は,AFOとT字杖使用下で屋外歩行可能で,11秒/10m,連続500m以上の歩行可能であった。【考察】本症例は,発症後22週経過時点で重度左片麻痺や,起立・歩行障害を呈した患者であった。屋内歩行が可能になることを目標に,振動刺激療法や課題特異型アプローチを中心とした治療介入を行った。麻痺の重症度に著明な改善は得られなかったものの,振動刺激療法や課題特異的な練習の反復により,実用的な歩行獲得や活動能力向上につながったものと考える。【倫理的配慮,説明と同意】 本報告に対して,COIは一切なく,当院の倫理委員会の承認を得られている。(承認番号19-001)またヘルシンキ宣言に基づき,対象者には本報告の目的および内容に関する同意を得られている。
ISSN:2434-3889
DOI:10.32298/kyushupt.2019.0_81