保育所運営企業の「生き残り戦略」に関する実証的研究 グラウンデッド・セオリー・アプローチに基づくカテゴリーの生成
「準市場化1)」した保育事業では,今後は社会福祉法人やNPO 法人などを巻き込んだ生き残り競争が起きることが予想される.この状況に特に敏感な保育所運営企業は,「生き残り競争」に向けたノウハウを現在蓄積していると推測される.そこで本研究は,保育所運営企業に蓄積された「生き残り戦略」を調べ,企業規模ごとの戦略の違いを明らかにすることを目的に行われた.大規模展開の企業の経営層5 名と小規模展開の企業の経営層5 名に対して半構造化面接を行い,「なぜ保育事業に参入したのか」,「貴社にはどのような強みがあるのか」などの質問を尋ねた.調査協力者の語りはグラウンデッド・セオリー・アプローチに基づくカテゴリー分...
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Published in | 日本社会福祉マネジメント学会誌 Vol. 1; no. 2; pp. 29 - 42 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本社会福祉マネジメント学会
2021
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 2436-4061 |
DOI | 10.50965/jasmjournal.1.02_29_75 |
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Summary: | 「準市場化1)」した保育事業では,今後は社会福祉法人やNPO 法人などを巻き込んだ生き残り競争が起きることが予想される.この状況に特に敏感な保育所運営企業は,「生き残り競争」に向けたノウハウを現在蓄積していると推測される.そこで本研究は,保育所運営企業に蓄積された「生き残り戦略」を調べ,企業規模ごとの戦略の違いを明らかにすることを目的に行われた.大規模展開の企業の経営層5 名と小規模展開の企業の経営層5 名に対して半構造化面接を行い,「なぜ保育事業に参入したのか」,「貴社にはどのような強みがあるのか」などの質問を尋ねた.調査協力者の語りはグラウンデッド・セオリー・アプローチに基づくカテゴリー分析により分類された.その結果,「企業の生い立ち」,「経営の方針」,「運営の強み」,「企業経営上の困難」,「現状批判」の5 つのカテゴリー・グループを生成することができた.また「生き残り戦略」について,大規模展開の企業の場合は資金を活かしてエビデンスに基づいた保育やIT,ICT 機器の導入などにより保育者の管理を行い,効率的に質の高い保育を目指していることがわかった.一方,小規模展開の企業の場合は保護者や子どもの満足度を高める自由度の高い保育プログラムと,その保育を支える保育者のゆとりという2 本柱の「生き残り戦略」が重要である. |
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ISSN: | 2436-4061 |
DOI: | 10.50965/jasmjournal.1.02_29_75 |