乳幼児による気管支肺炎に対し呼吸理学療法を実施した症例について O-068 小児・発達

【目的】 当院は、長崎地区の小児二次医療の役割を担っており、乳幼児の呼吸器疾患治療を行っている。入院時に軽症であっても酸素化低下が進行し、ネブライザー付酸素吸入器(以下、インスピロン)が必要となる患者には、小児科医師の判断により排痰介助目的にて理学療法処方が出されるケースがある。また、肺炎症状が進行し無気肺や急性呼吸不全に陥ると人工呼吸器を使用することになり、患者にとっても負担が大きい。今回、気管支肺炎、喘息重積発作患者に対し、インスピロン管理下に呼吸理学療法(以下、RPT)を実施し、急性呼吸不全、人工呼吸器回避に寄与できた可能性を示した症例を報告する。【症例】 診断名:気管支肺炎、喘息重積発...

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Published in九州理学療法士学術大会誌 p. 68
Main Authors 白木, 剛志, 夏井, 一生
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会 2023
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ISSN2434-3889
DOI10.32298/kyushupt.2023.0_68

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Summary:【目的】 当院は、長崎地区の小児二次医療の役割を担っており、乳幼児の呼吸器疾患治療を行っている。入院時に軽症であっても酸素化低下が進行し、ネブライザー付酸素吸入器(以下、インスピロン)が必要となる患者には、小児科医師の判断により排痰介助目的にて理学療法処方が出されるケースがある。また、肺炎症状が進行し無気肺や急性呼吸不全に陥ると人工呼吸器を使用することになり、患者にとっても負担が大きい。今回、気管支肺炎、喘息重積発作患者に対し、インスピロン管理下に呼吸理学療法(以下、RPT)を実施し、急性呼吸不全、人工呼吸器回避に寄与できた可能性を示した症例を報告する。【症例】 診断名:気管支肺炎、喘息重積発作。発熱と喘鳴、呼吸困難感認められ当院へ紹介となった1歳2か月男児。既往歴:ダウン症候群。心房中隔欠損症 1 ㎜(無症状、自然閉鎖待ち。現状リスクないため、RPT実施許可あり) 気道病変無し 遠城寺式乳幼児分析的発達検査:移動運動:6~7か月 対人:5~6か月 喘息評価:MPISスコア 10点 四肢弛緩性テスト陽性。【経過】 第1病日よりインスピロン流量5L/min, FiO2 50%にて酸素療法開始。第2病日には酸素化不良進行し、アスプール薬剤使用、流量10L/min, FiO2 70%に変更。同日、排痰介助目的を主としたRPTの指示あり開始。胸部レントゲン上両側肺門部に浸潤影を認め、聴診上両肺野の呼吸音低下、高調性連続性副雑音を聴取。陥没呼吸も認められ、SPO2は93%を測定。左胸部優位の胸壁振動、低調性連続性副雑音も認められたため、吸入療法実施後に体位ドレナージとして右側臥位、右前傾側臥位、腹臥位を併用し実施。その後、聴診にて分泌物移動が認められたのを確認し振動法、スクイージングを実施。特にスクイージング実施時は喘息による気道狭窄があるため、悪化させないように聴診を行いながら実施した。その結果、中枢気道まで痰の移動認められ、吸引実施時も多量の痰を認めた。また、陥没呼吸は改善しSPO2も98%と即時効果あるため主治医と協議しRPT有効と判断。吸入療法実施時間帯に合わせて計2回介入することとなった。母親への指導はポジショニングの動画を撮影し、動画を用いて右側臥位、腹臥位を行うよう指導。第6病日には酸素化徐々に改善し、アスプール薬剤中止。インスピロン流量10L/min, FiO2 50%に変更。SPO2も96%を持続可能。第8病日には体調回復に合わせてインスピロン装着を嫌がる場面増えてきたが装着外れた場合でもSPO2 96%を持続可能。第10病日には胸壁振動、痰量も漸減してきたためRPTを1回へ変更。第12病日には室内気へ変更し、SPO2 98%持続可能となりMPISスコアも2点。第14病日に自宅退院となった。【結果】 患者は良好な酸素化を維持でき肺障害が改善し、急性呼吸不全、人工呼吸器使用を回避できた。また、新たな肺炎や無気肺、感染症などの予後に有害と思われる合併症も認めなかった。【考察】 今回、RPTの効果が得られたのはできる限り気道内分泌物の貯留を避けるために聴診、触診などを行いながら体位ドレナージ、手技を選択し、痰の移動と確実な吸引を行えたことが要因と考えられる。また、RPT実施後も時間経過に伴い、分泌物が出現してくるため、病棟スタッフ、母親協力の下、ポジショニングの実施や症状把握方法の指導を行い、分泌物貯留を予防する環境を作れたことも要因の一つと思われる。以上を踏まえ、インスピロン管理下での適切なRPTを継続できれば急性呼吸不全、人工呼吸器使用の回避にも寄与できる可能性を示した。【倫理的配慮、説明と同意】 ヘルシンキ宣言に基づき患者の保護者には発表の趣旨を説明し同意を得た。また、患者の個⼈情報を匿名加工し、特定されないよう配慮を行った。
ISSN:2434-3889
DOI:10.32298/kyushupt.2023.0_68