脳梗塞後の患者の入院時低栄養はバランス機能の改善度を小さくする O-019 成人中枢神経

【目的】 移動能力の回復は、脳卒中後のリハビリテーションの目標の一つである。移動能力回復の予測因子には様々報告があるが、特にバランス機能は脳卒中後の患者における移動能力の最も一般的な指標である。バランス機能の低下は移動能力の低下や転倒の増加と関連していることから、バランス機能の向上は重要である。 脳卒中後の患者の多くに低栄養を認める。脳卒中後の低栄養はADLや体幹機能の回復に悪影響を及ぼすことが報告されているが、低栄養とバランス機能回復の関連については明らかになっていない。もし低栄養がバランス機能回復の低下と関連するのであれば、低栄養を改善する取り組みはバランス機能やADLの獲得に有効である。...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in九州理学療法士学術大会誌 p. 19
Main Authors 岩田, 剛, 湧上, 聖, 尾川, 貴洋, 佐藤, 圭祐
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会 2023
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN2434-3889
DOI10.32298/kyushupt.2023.0_19

Cover

More Information
Summary:【目的】 移動能力の回復は、脳卒中後のリハビリテーションの目標の一つである。移動能力回復の予測因子には様々報告があるが、特にバランス機能は脳卒中後の患者における移動能力の最も一般的な指標である。バランス機能の低下は移動能力の低下や転倒の増加と関連していることから、バランス機能の向上は重要である。 脳卒中後の患者の多くに低栄養を認める。脳卒中後の低栄養はADLや体幹機能の回復に悪影響を及ぼすことが報告されているが、低栄養とバランス機能回復の関連については明らかになっていない。もし低栄養がバランス機能回復の低下と関連するのであれば、低栄養を改善する取り組みはバランス機能やADLの獲得に有効である。そこで、本研究では、脳梗塞後の患者の低栄養がバランス機能の改善に与える影響を検討することを目的とした。【方法】 本研究は回復期リハビリテーション病棟入院患者を対象にした後ろ向き研究である。対象者は65歳以上の脳梗塞後の患者とした。調査項目は基本属性に加え、栄養状態(MNA-SF、GLIM)、バランス機能(BBS)、脳梗塞の重症度(NIHSS)、FIM、入院期間、1日あたりのリハビリテーション時間(分/日)を評価した。 入院時のGLIM基準をもとに低栄養群と対照群に群分けし、群間比較を行った。また、BBSの変化量(退院時BBS-入院時BBS)に対し、低栄養の他に年齢、入院時BBS等を説明変数とした重回帰分析を行った。説明変数は先行研究でバランス機能に関連すると報告されている変数を選択した。統計処理にはRを使用し、有意水準は5%とした。【結果】 対象者は304名、平均年齢は79.2±8.1歳、男性173名(56.9%)、女性131名(43.1%)、低栄養群は114名(37.5%)、対照群は190名(62.5%)だった。低栄養群は対照群と比較して、高齢であり(81.5±8.0 VS. 77.9±7.9、P<0.001)、入院時NIHSSが高く(8[4-14]VS. 4[2-8]、P<0.001)、入院時BBSが低かった(16.0±17.1 VS. 28.3±18.4、P<0.001)。また、低栄養群は対照群と比べて、退院時BBS(24.2±19.6 VS. 40.0±16.9、P<0.001)、BBS変化量が小さかった(8.1±8.8 VS. 11.7±11.7、P=0.005)。さらに、低栄養群は対照群と比べて、入院期間は有意に長かったが、リハビリテーション量に差はなかった。 交絡因子で調整したBBSの変化量に対する重回帰分析の結果、入院時低栄養は、BBSの変化量の低下と関連していた(B:-2.988、95%CI=-5.481 to -0.495、P=0.019)。【考察】 入院時の低栄養は、脳梗塞後の患者のBBS変化量の低下と関連していた。いくつかの先行研究では、低栄養と転倒のリスクや体幹機能の回復については検討されているが、低栄養がバランス機能の回復に及ぼす影響について検討された報告はない。脳卒中後の患者の低栄養の有病率は、発症後数週間で高くなることや低栄養の患者の多くは、骨格筋量と筋力が低下していることが報告されている。システマティックレビューでは、入院高齢者の多くが低栄養、フレイル、サルコペニアであると報告されている。つまり、低栄養は骨格筋量と筋力の改善を制限し、バランス機能の回復を小さくする可能性がある。西岡らは、低体重の患者は、肥満患者よりもADLの改善度が小さいことを報告している。さらに、栄養状態の改善はADLの回復と関連することが知られている。したがって、回復期リハビリテーション病棟入院時の低栄養を早期に評価し、栄養状態を考慮したリハビリテーションを実施することが必要である。【倫理的配慮、説明と同意】 当研究は「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」を遵守し、当法人の研究倫理審査会によって承認され(ID:23-08)、ヘルシンキ宣言に従って実施した。
ISSN:2434-3889
DOI:10.32298/kyushupt.2023.0_19