繰り返えしベル音暴露に対する心拍数および指尖容積脈波の反応の個人差について

自律神経系諸機能の騒音刺激に対する反応パターンの個人差を明らかとするため,繰り返えしベル音暴露に対する心拍数(HR)と指尖容積脈波振幅(PLT)を同時に測定し,両者の変動にみられる個人差について検討した。 19∼22歳の健康な男子学生3名を対象として,遮音室(暗騒音30dBA以下)内で,3秒間の警報ベル音(91.5dBA)を規則的(2分30秒間隔)および不規則的(90∼150秒間隔)に暴露した。(1)規則的暴露および(2)不規則的暴露は,それぞれ5回を1ブロック(B)として,5分間隔で第5Bまで,それぞれ計25回繰り返えしたが,(2)は(1)の1週間後に行なった。HRおよびPLTは,それぞれ胸...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本衛生学雑誌 Vol. 39; no. 3; pp. 651 - 661
Main Authors 南, 正信, 兜, 真徳, 竹本, 泰一郎
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 一般社団法人日本衛生学会 1984
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0021-5082
1882-6482
DOI10.1265/jjh.39.651

Cover

More Information
Summary:自律神経系諸機能の騒音刺激に対する反応パターンの個人差を明らかとするため,繰り返えしベル音暴露に対する心拍数(HR)と指尖容積脈波振幅(PLT)を同時に測定し,両者の変動にみられる個人差について検討した。 19∼22歳の健康な男子学生3名を対象として,遮音室(暗騒音30dBA以下)内で,3秒間の警報ベル音(91.5dBA)を規則的(2分30秒間隔)および不規則的(90∼150秒間隔)に暴露した。(1)規則的暴露および(2)不規則的暴露は,それぞれ5回を1ブロック(B)として,5分間隔で第5Bまで,それぞれ計25回繰り返えしたが,(2)は(1)の1週間後に行なった。HRおよびPLTは,それぞれ胸部誘導(V4)による心電図と光電プレテスモグラムの記録を,暴露中3秒間を中心として,暴露前3秒,開始後30秒までの計11の3秒間隔に分け,各間隔に完全に入る棘波R間隔および収縮期ピーク(P)間隔から,平均HRおよび平均PLTとして算出した。ただし,各反応性の検討は,暴露中・後の値の暴露前値に対する%値について行なった。 結果,ベル音に対するHRの反応には,全体的に大きな個人内・個人間変動がみられ,馴れの傾向も定量的に検討しえなかった。ただし,被験者1名では,(1)の第1Bにおいて暴露直後に頻脈,その後徐脈に移行する典型的な反応を示した。他方,PLTは,HRの頻脈のピークより多少遅れて最小ピークを示す,有意かつ繰り返えし見られる反応を示した。また,(1)では,第1Bから5Bの間で,その最小ピークの有意な減少が2名で,また増大が1名でみられた。 以上から,(馴れの現象を含めて)自律神経系の反応パターンの個人差は明らかであり,騒音の生理的影響に関する研究のみならず,音刺激を用いた自律神経機能検査においても,自律神経機能を単一指標で代表させることには注意が必要であることが示唆される。
ISSN:0021-5082
1882-6482
DOI:10.1265/jjh.39.651