日本の家族構造 変化・連続性・地域性

長い歴史のなかで、家族は次世代再生産/人口再生産の基本単位でありつづけた。筆者は過去30年にわたり、こうした観点から、全国レベルの社会調査データを用いた定量的な調査研究を、慣習的家族制度、性別役割分業、結婚・離婚・再婚、夫婦出生力の変化・連続性・地域性に照準しながら行ってきた。  昨年、国内特別研究(サバティカル)を取得した機会に、これまでの研究結果を、統一的な多変量統計モデルにより、全面的かつ統合的に再分析することができた。本論文はその成果の一部である。多変量解析の結果は膨大で単行本の紙幅を必要とし、執筆には時間がかかるため、本稿ではそれに先んじて、得られた知見とその含意をグラフと統計地図を...

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Published in明治大学社会科学研究所紀要 Vol. 63; no. 2; pp. 128 - 165
Main Author 加藤, 彰彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 明治大学社会科学研究所 25.03.2025
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ISSN0389-5971
2758-7649
DOI10.60209/issmeiji.63.2_128

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Summary:長い歴史のなかで、家族は次世代再生産/人口再生産の基本単位でありつづけた。筆者は過去30年にわたり、こうした観点から、全国レベルの社会調査データを用いた定量的な調査研究を、慣習的家族制度、性別役割分業、結婚・離婚・再婚、夫婦出生力の変化・連続性・地域性に照準しながら行ってきた。  昨年、国内特別研究(サバティカル)を取得した機会に、これまでの研究結果を、統一的な多変量統計モデルにより、全面的かつ統合的に再分析することができた。本論文はその成果の一部である。多変量解析の結果は膨大で単行本の紙幅を必要とし、執筆には時間がかかるため、本稿ではそれに先んじて、得られた知見とその含意をグラフと統計地図を用いて記述的かつ要約的に解説したい。  まず、家族変動論の主流である核家族化論の問題点について歴史的背景と基礎的統計事実にもとづき論じる。次に、結婚後の親との同居行動についてライフコース・データを用いた分析結果を要約して、通説の誤りを指摘する。さらに、東北日本型/西南日本型という日本家族の2つのタイプについて、多世代同居・近居、育児期の母親のフルタイム/パートタイム就業、夫婦の姓、および婚外出生を指標に用いた統計地図を提示して、その構造が1世紀にわたり持続をしていることを示す。また、長期に持続する家族構造のもと、離婚率の地理的分布が東西反転したメカニズムについても論じる。そして最後に、ライフコース・データによる縦断的分析と統計地図による横断的分析の結果を統合し、その含意について議論を行う。
ISSN:0389-5971
2758-7649
DOI:10.60209/issmeiji.63.2_128