無症候性頸部血管雑音例の頭部CTおよび頸動脈超音波所見

無症候性頸部血管雑音 (bruit) 例における脳実質病変の頻度, 特徴を明らかにする目的で, その頭部CT像を頸動脈超音波断層像とともに検討した. 対象は脳卒中の既往や神経学的異常所見なく, 頸動脈性 bruit が聴取された高齢者37例 (平均年齢73.2歳, 男28例) で, 15例では bruit が両側性であった. CT上, 限局性低吸収域は13例35.1%, 中等度以上の脳室周囲低吸収域は12例32.4%にみられた. 限局性低吸収域はいずれも梗塞巣と考えられ, 全部で23個 (左右の大脳半球に各々13個, 10個) あった. この内訳は19個がラクナで, このうち13個は基底核付近...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 36; no. 11; pp. 803 - 810
Main Authors 田中, 由利子, 高崎, 優, 久保, 秀樹, 馬原, 孝彦, 阿美, 宗伯, 岩本, 俊彦, 清水, 武志
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 25.11.1999
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.36.803

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Summary:無症候性頸部血管雑音 (bruit) 例における脳実質病変の頻度, 特徴を明らかにする目的で, その頭部CT像を頸動脈超音波断層像とともに検討した. 対象は脳卒中の既往や神経学的異常所見なく, 頸動脈性 bruit が聴取された高齢者37例 (平均年齢73.2歳, 男28例) で, 15例では bruit が両側性であった. CT上, 限局性低吸収域は13例35.1%, 中等度以上の脳室周囲低吸収域は12例32.4%にみられた. 限局性低吸収域はいずれも梗塞巣と考えられ, 全部で23個 (左右の大脳半球に各々13個, 10個) あった. この内訳は19個がラクナで, このうち13個は基底核付近にみられた. ラクナ以外では3個が左右頭頂葉の境界域梗塞, 1個が左前頭葉前運動領野の皮質梗塞であった. 超音波所見では何らかの頸動脈病変が74本中65本 (このうち高度狭窄26本, 閉塞11本) にみられた. 脳病変を有する群 (vs無病変群) では高血圧 (92% vs 50%), 虚血性心疾患 (69% vs 29%) が有意に多かったが (p<0.05), 超音波所見に差はなかった. また, bruit と同側の大脳半球病変の頻度 (vs 非 bruit 側) は23% (vs 23%) と差はなかったが, 頸動脈では高度狭窄 (46% vs9%) が有意に多かった (p<0.01). 重回帰分析の結果, 脳梗塞の有無に影響する因子は高血圧であった. 以上より, 無症候性 bruit 例は高度の頸動脈狭窄を伴い, 脳梗塞が約三分の一例にみられた. これらが無症候性であった理由は, 梗塞巣の多くが基底核付近のラクナであったためと考えられた.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.36.803