反対給付のない資金の会計的取り扱いの体系化に向けて 使途制約のあるものに焦点を当てて

本稿は非営利組織の特徴である反対給付のない資金の会計的取扱いを体系的に検討するものである。補助金は反対給付のない資金に該当するものであり、その多面的研究には反対給付のない資金全体の会計についてまとめることが有用と考えたため、研究内容を反対給付のない資金全体に拡充することとした。本文に掲げた図表2は組織体の収入について、反対給付の有無、使途制約の有無(外部からの使途制約と内部での使途制約に区分)し、本稿ではこのうち特に「反対給付がなく、内部での使途制約がある」部分に焦点を当てて検討した。  歴史的にも活動領域的にも非営利組織のけん引役である公益法人では、現在公益法人改革が行われており、その改革の...

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Published in明治大学社会科学研究所紀要 Vol. 63; no. 2; pp. 93 - 110
Main Author 石津, 寿惠
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 明治大学社会科学研究所 25.03.2025
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ISSN0389-5971
2758-7649
DOI10.60209/issmeiji.63.2_93

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Summary:本稿は非営利組織の特徴である反対給付のない資金の会計的取扱いを体系的に検討するものである。補助金は反対給付のない資金に該当するものであり、その多面的研究には反対給付のない資金全体の会計についてまとめることが有用と考えたため、研究内容を反対給付のない資金全体に拡充することとした。本文に掲げた図表2は組織体の収入について、反対給付の有無、使途制約の有無(外部からの使途制約と内部での使途制約に区分)し、本稿ではこのうち特に「反対給付がなく、内部での使途制約がある」部分に焦点を当てて検討した。  歴史的にも活動領域的にも非営利組織のけん引役である公益法人では、現在公益法人改革が行われており、その改革の柱の一つが当該部分に該当する公益充実資金の導入である。このため、従前より存在する当該部分に係る社会福祉充実残額(厚生労働省)と公益充実資金(内閣府)の制度・会計的取扱いについて比較検討し、「反対給付がなく、内部での使途制約がある」部分の課題、今後の方向等について検討した。  なお、「反対給付のない資金」のうち「外部からの使途制約」がある部分については一定程度の先行研究があり、また、資金の拠出者の会計については別稿で一部検討済みである。したがって、今回の研究を行ったことにより「反対給付のない資金」についての会計処理の体系化が一定程度進むと考えられる。社会的課題が複雑・増大化し続ける昨今、その解決のための組織体は、公益法人、社会福祉法人といった非営利組織のみならず、「社会的企業」(株式会社を含む)なども一定の役割を果たすなど多様化が進んできている。それに伴い、寄付・補助金・支援金など「反対給付のない資金」を受領する主体も一層拡大すると考えられる。このため、今後一層、当分野の研究を推進していくことには社会的意義が小さくないと言えよう。
ISSN:0389-5971
2758-7649
DOI:10.60209/issmeiji.63.2_93