Hikeshiを標的としたがん温熱療法の可能性

「要旨」 : ハイパーサーミア (HT) は, 有効ながん治療法として位置付けられている. しかしながら, HTを用いた時の重大な問題点は, 分子シャペロンとして機能する熱ショックタンパク質HSPsの発現誘導により温熱抵抗性を獲得することである. HSPsの中で, Hsp70は細胞保護作用を有し, 温熱抵抗性を獲得に重要な役割を演じている. 近年, C11orf73の遺伝子産物Hikeshi (火消し) が熱ストレス条件下におけるHsp70の核輸送タンパク質として機能することが明らかとなった. Hikeshiの発現抑制は, ヒトがん細胞において非ストレス下では影響を与えなかったが, HTやマイ...

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Published inThermal Medicine Vol. 36; no. 4; pp. 91 - 99
Main Authors 田渕圭章, 柚木達也
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本ハイパーサーミア学会 25.12.2020
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ISSN1882-2576

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Summary:「要旨」 : ハイパーサーミア (HT) は, 有効ながん治療法として位置付けられている. しかしながら, HTを用いた時の重大な問題点は, 分子シャペロンとして機能する熱ショックタンパク質HSPsの発現誘導により温熱抵抗性を獲得することである. HSPsの中で, Hsp70は細胞保護作用を有し, 温熱抵抗性を獲得に重要な役割を演じている. 近年, C11orf73の遺伝子産物Hikeshi (火消し) が熱ストレス条件下におけるHsp70の核輸送タンパク質として機能することが明らかとなった. Hikeshiの発現抑制は, ヒトがん細胞において非ストレス下では影響を与えなかったが, HTやマイルドHTの感受性を有意に増強した. ヒト胃や腎の腫瘍組織においてHikeshiの発現上昇が示されている. また, HikeshiのCys4SerやVal54Leuのホモ接合型点変異は, 各々, フィンランドやアシュケナージ系ユダヤ人の白質脳症に関連することが報告された. 本総説では, Hikeshiの生理機能や病理的役割を要約し, さらに, そのHT治療のターゲット分子になる可能性について言及する.
ISSN:1882-2576