Primary progressive aphasia で発症し, corticobasal degeneration に移行した1例

症例は65歳, 女性. 2001年より進行する言語障害のため2003年5月当科入院. 発語は努力性で, 意図的に発語しようとすると音の歪みが目立った. 障害は一貫性に欠け, 時には正常に発語することができた. 仮名・漢字の錯書がみられ, ごく軽度の了解障害を認めた. 明らかな字性錯語はみられず, 復唱自体は保たれていた. 計算障害を認めたが, 失行や失認は認められなかった, 他の神経学的症状にも著変は認められなかった. MRIでは左前頭葉に強い萎縮と頭頂葉の萎縮を認めた. 99mTc-ECD SPECTでは左に強い両側前頭葉, 特に Broca 野とその上部, 補足運動野で血流低下を認め, 血...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 42; no. 6; pp. 702 - 707
Main Authors 松原, 悦朗, 東海林, 幹夫, 永野, 功, 阿部, 康二, 瓦林, 毅
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 25.11.2005
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.42.702

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Summary:症例は65歳, 女性. 2001年より進行する言語障害のため2003年5月当科入院. 発語は努力性で, 意図的に発語しようとすると音の歪みが目立った. 障害は一貫性に欠け, 時には正常に発語することができた. 仮名・漢字の錯書がみられ, ごく軽度の了解障害を認めた. 明らかな字性錯語はみられず, 復唱自体は保たれていた. 計算障害を認めたが, 失行や失認は認められなかった, 他の神経学的症状にも著変は認められなかった. MRIでは左前頭葉に強い萎縮と頭頂葉の萎縮を認めた. 99mTc-ECD SPECTでは左に強い両側前頭葉, 特に Broca 野とその上部, 補足運動野で血流低下を認め, 血流低下は左言語領域を超えて頭頂葉にも認められた. 2年以上に渡って進行する失語が主体で, その他の知的機能はよく保たれ日常生活は自立していることより primary progressive aphasia (PPA) と診断された. 2003年12月の標準高次動作性試験で facial apraxia が認められ, 2004年5月には limb apraxia が出現すると共に四肢の rigidity や痴呆も出現し, corticobasal degeneration (CBD) の臨床像を呈した. 12月に施行したSPECTでは前回と同じ部位で血流低下が著明に進行していた. 本例では, 臨床的にCBDへ移行する以前から頭頂葉の血流低下が認められ, SPECT所見が進行の予測に有用であった.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.42.702