整位が得られなかった復位のない顎関節円板前方転位症例における保存的治療

復位のない関節円板前方転位で非観血的に円板の整位が不可能であった35症例に対し, スプリントや補綴などの咬合治療による保存的治療を行いその経過を検討した。その結果, 1. 上下中切歯間最大開口域の平均は治療前では27.6mm, 治療後では44.4mmを示し34例で40mm以上を示した。 2. 治療前30例に認められた顎関節部癖痛は治療後27例でほぼ消失し, 3例で改善した。咀嚼筋痛は34例中25例消失した。 3. 症状の改善とともにクレピタスが出現する頻度が高かった。 4. 治療前のX線写真による観察では21例 (63.6%) に下顎頭の異常所見が見られた。治療後では26例 (78.8%) に...

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Published in日本顎関節学会雑誌 Vol. 2; no. 2; pp. 302 - 314
Main Authors 甲斐, 貞子, 甲斐, 裕之, 田畑, 修, 白土, 雄司, 浜崎, 朝子, 田代, 英雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本顎関節学会 30.11.1990
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ISSN0915-3004
1884-4308
DOI10.11246/gakukansetsu1989.2.302

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Summary:復位のない関節円板前方転位で非観血的に円板の整位が不可能であった35症例に対し, スプリントや補綴などの咬合治療による保存的治療を行いその経過を検討した。その結果, 1. 上下中切歯間最大開口域の平均は治療前では27.6mm, 治療後では44.4mmを示し34例で40mm以上を示した。 2. 治療前30例に認められた顎関節部癖痛は治療後27例でほぼ消失し, 3例で改善した。咀嚼筋痛は34例中25例消失した。 3. 症状の改善とともにクレピタスが出現する頻度が高かった。 4. 治療前のX線写真による観察では21例 (63.6%) に下顎頭の異常所見が見られた。治療後では26例 (78.8%) に所見が認められた。粗造性骨変化の一部は下顎頭の扁平化へ移行する傾向にあった。また治療後下顎頭の前方運動は大部分の症例で改善をみた。 5. 31例に治療前の両側関節腔造影検査を施行した。症状側では復位のない関節円板前方転位所見の他, 20例で円板形態の変化が認められ, 関節腔内の線維性癒着像を示した症例においても, 開口障害は消失していた。 6. 造影の結果, 9例において非症状側にも復位のない関節円板前方転位が認められた。 以上より保存的療法は大多数の復位のない関節円板前方転位症例に対して有効であると思われた。円板が転位し形態変化を伴っても, 関節が状況に適応し, 症状の改善が期待されると思われた。
ISSN:0915-3004
1884-4308
DOI:10.11246/gakukansetsu1989.2.302