高齢者びまん性肺胞傷害におけるユビキチン陽性細胞についての研究

目的: ユビキチンプロテアソームシステム (UPS) は蛋白分解系を介して蛋白質を制御し生体の恒常性維持に係わる重要な機構であり, とくに神経系疾患におけるユビキチン (Ub) の役割が注目されている. 一方, びまん性肺胞傷害 (DAD) の肺胞上皮細胞質内に好酸性封入体が出現することが知られており, それがUb陽性であることを我々は初めて報告した. 今回, 高齢者DADに出現したUb陽性細胞と細胞傷害との関連を明らかにするために剖検肺組織を用いて検討した. 方法: 高齢者DAD 26例の剖検肺組織から, 肺胞上皮細胞質内封入体についてUb免疫染色を行い, また, DAD重症度をスコア化して...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 43; no. 5; pp. 622 - 629
Main Authors 河西, 竜太, 河端, 美則, 三俣, 昌子, 上野, 高浩, 山田, 勉, 上原, 健司, 水谷, 智彦, 大荷, 澄江, 澤田, 皓史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 25.09.2006
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.43.622

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Summary:目的: ユビキチンプロテアソームシステム (UPS) は蛋白分解系を介して蛋白質を制御し生体の恒常性維持に係わる重要な機構であり, とくに神経系疾患におけるユビキチン (Ub) の役割が注目されている. 一方, びまん性肺胞傷害 (DAD) の肺胞上皮細胞質内に好酸性封入体が出現することが知られており, それがUb陽性であることを我々は初めて報告した. 今回, 高齢者DADに出現したUb陽性細胞と細胞傷害との関連を明らかにするために剖検肺組織を用いて検討した. 方法: 高齢者DAD 26例の剖検肺組織から, 肺胞上皮細胞質内封入体についてUb免疫染色を行い, また, DAD重症度をスコア化して検討を加えた. 対照群は非DAD19例の肺組織を用いた. 両群全例の平均年齢は72.1歳である. 結果: DAD例中, 7例 (26.9%) の肺胞上皮細胞質内に好酸性封入体を認め (封入体群), 封入体は全てUb陽性を呈した. サイトケラチンKL-1も封入体に一致して陽性であった. 封入体群中, 封入体の無い肺胞上皮にも小顆粒状のUb陽性像を認めた. また, 封入体の無いDAD例中にも同様の小顆粒状Ub陽性細胞を認めた (Ub陽性非封入体群, DAD例中4例). DAD例中, Ub陽性細胞を認めなかったUb陰性群は15例であり, 対照群も全てUb陰性であった. 封入体群はUb陰性群に比べてDAD重症度スコアは有意に高値であり, このようなUb陽性細胞 (封入体のある肺胞上皮と顆粒状陽性を示す肺胞上皮) は硝子膜が広範囲に形成された症例に出現した. 結論: 高齢者DAD肺胞上皮にUb陽性封入体が出現し, この封入体以外にもUb陽性を示す肺胞上皮を認めた. これはサイトケラチンを含む異常なUb化蛋白がUPSによって分解処理されず, 封入体として認識されるようになることが示された. また, Ub陽性細胞の出現は肺疾患における細胞傷害の形態学的指標の一つとなることも示唆された.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.43.622