PCR法による急性中耳炎患児鼻咽腔よりのペニシリン耐性肺炎球菌の検出
急性中耳炎には,生後3歳までに50%~71%の小児が少なくとも1回罹患するとされる.肺炎球菌は,急性中耳炎の起炎菌の30%~50%を占めるとされ,従来はペニシリン剤に良好な感受性を示し,抗生剤の感受性は問題とされなかった.しかし.近年,急性中耳炎患児の耳漏より検出される肺炎球菌の中に抗生剤に低感受性を示すものが増加し,従来の抗生剤治療にて難治性を示す中耳炎の報告が多くなされている.今回,小児急性中耳炎初診例のうち,鼻咽腔より肺炎球菌が検出された12例を用い,β-ラクタム剤に対する最小発育阻止濃度(MIC)の測定およびPCR法によるペニシリン結合蛋白(PBP)遺伝子の変異につき検討した.12例の...
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Published in | 日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 101; no. 7; pp. 924 - 930 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | English Japanese |
Published |
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
20.07.1998
日本耳鼻咽喉科学会 |
Subjects | |
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ISSN | 0030-6622 1883-0854 |
DOI | 10.3950/jibiinkoka.101.7_924 |
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Summary: | 急性中耳炎には,生後3歳までに50%~71%の小児が少なくとも1回罹患するとされる.肺炎球菌は,急性中耳炎の起炎菌の30%~50%を占めるとされ,従来はペニシリン剤に良好な感受性を示し,抗生剤の感受性は問題とされなかった.しかし.近年,急性中耳炎患児の耳漏より検出される肺炎球菌の中に抗生剤に低感受性を示すものが増加し,従来の抗生剤治療にて難治性を示す中耳炎の報告が多くなされている.今回,小児急性中耳炎初診例のうち,鼻咽腔より肺炎球菌が検出された12例を用い,β-ラクタム剤に対する最小発育阻止濃度(MIC)の測定およびPCR法によるペニシリン結合蛋白(PBP)遺伝子の変異につき検討した.12例の肺炎球菌のうち2例(16.7%)にペニシリン耐性肺炎球菌が,3例(25.0%)にペニシリン低感受性肺炎球菌が検出された.耐性肺炎球菌においては高頻度にPBP遺伝子の変異が認められた.すなわち,pp2x遺伝子およびpp2b遺伝子,またはpbp1a遺伝子,pbp2x遺伝子,pbp2b遺伝子のすべてに変異が認められた.さらにこのPBP遺伝子の変異とPenicillin G(PC-G)およびセフェム剤に対するMICを比較した結果,PBP遺伝子の変異頻度が増加するにつれMICが上昇し,PG-Gのみでなくセフェム剤への耐性化も示された.急性中耳炎患児の鼻咽腔より分離された肺炎球菌の約半数がペニシリン耐性もしくは低感受性であり,経口セフェムに対しても耐性化を示すこの結果は,経口抗生剤の選択に際してPRSPの存在を念頭におくことが一層重要となることを示唆するものである.また,PCR法はディスク法および微量液体希釈法に見られるような培養の際の問題が少なく,迅速かつ高感度に肺炎球菌の抗生剤感受性を遺伝子レベルで検討できる有用な方法と考えられた. |
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ISSN: | 0030-6622 1883-0854 |
DOI: | 10.3950/jibiinkoka.101.7_924 |