後期高齢入所者における高齢者用栄養素補充飲料による栄養状態の改善効果

高齢者は, 加齢にともなう生理的変化による嗜好の偏り, 疾患による咀嚼嚥下障害, 消化吸収障害, 精神障害, 薬剤投与による食欲低下や栄養障害, 経済的困窮, 独居による孤食化や調理困難などの理由により, 栄養バランスの偏りや食事回数, 食事摂取量の減少を招き, 低栄養状態に陥るケースが多い1). 当施設(老人保健施設サングレース)においても, 入所者の平均年齢は84. 8歳と年々高齢化が進んでおり, 食事摂取量の低下への対応に苦慮する場合が多い. さらに高齢者においてはビタミン欠乏の存在が指摘されており, 要介護高齢者および慢性疾患を有する高齢者ではその比率が10~30%と高く, 慢性的なビ...

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Published in栄養学雑誌 Vol. 63; no. 2; pp. 89 - 95
Main Authors 巴 美樹, 岩切尚美, 酒井理恵, 瓦林信子, 三瓶彰子, 井上由紀, 山本 茂
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本栄養改善学会 01.04.2005
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ISSN0021-5147

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Summary:高齢者は, 加齢にともなう生理的変化による嗜好の偏り, 疾患による咀嚼嚥下障害, 消化吸収障害, 精神障害, 薬剤投与による食欲低下や栄養障害, 経済的困窮, 独居による孤食化や調理困難などの理由により, 栄養バランスの偏りや食事回数, 食事摂取量の減少を招き, 低栄養状態に陥るケースが多い1). 当施設(老人保健施設サングレース)においても, 入所者の平均年齢は84. 8歳と年々高齢化が進んでおり, 食事摂取量の低下への対応に苦慮する場合が多い. さらに高齢者においてはビタミン欠乏の存在が指摘されており, 要介護高齢者および慢性疾患を有する高齢者ではその比率が10~30%と高く, 慢性的なビタミン欠乏症が存在すると考えられている2). 特にエネルギー代謝の補酵素として働くビタミンB1は非常に欠乏しやすいビタミンとして知られており, 長期入院高齢者においてはその栄養状態が極めて悪いことが指摘されている3). さらに最近では, 救命救急患者の30%4), 消化器外科患者の40%5)がビタミンB1の欠乏状態にあるとの報告も見受けられ, 栄養管理上重要な栄養素であると考えられる.
ISSN:0021-5147