顎関節症患者における舌知覚異常の臨床的検討

1987年Isbergらは, 解剖により舌神経が外側翼突筋の筋腹間を通る個体が52例中3例あることを見いだし, そのような個体が顎関節症になり顎関節痛をもつと, 外側翼突筋にスパズムが発生し筋が舌神経を圧迫するために, 舌の知覚異常が発現すると報告した。この報告では, 円板転位がある患者208例中, 舌の半側知覚異常と発音障害があったものが7例存在していたとされている。そこで, 顎関節症患者に知覚異常があり得るのか否かを調査するために, 1992年1月-12月に東京医科歯科大学歯学部第一口腔外科を受診した顎関節症患者911例中, 患者質問表を回収しえた503例から舌症状の有無を検索した。その結...

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Published in日本顎関節学会雑誌 Vol. 7; no. 1; pp. 75 - 80
Main Authors 小林, 淳二, 鈴木, 和彦, 天笠, 光雄, 渋谷, 智明, 大村, 欣章, 木野, 孔司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本顎関節学会 20.05.1995
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ISSN0915-3004
1884-4308
DOI10.11246/gakukansetsu1989.7.75

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Summary:1987年Isbergらは, 解剖により舌神経が外側翼突筋の筋腹間を通る個体が52例中3例あることを見いだし, そのような個体が顎関節症になり顎関節痛をもつと, 外側翼突筋にスパズムが発生し筋が舌神経を圧迫するために, 舌の知覚異常が発現すると報告した。この報告では, 円板転位がある患者208例中, 舌の半側知覚異常と発音障害があったものが7例存在していたとされている。そこで, 顎関節症患者に知覚異常があり得るのか否かを調査するために, 1992年1月-12月に東京医科歯科大学歯学部第一口腔外科を受診した顎関節症患者911例中, 患者質問表を回収しえた503例から舌症状の有無を検索した。その結果, 18例に舌の知覚異常が存在するとの回答が得られた。これら18例を中心に臨床的検討を行った。 上記18例中円板前方転位症例12例では, 顎関節と舌の症状側の一致が5例みられ, そのうち2例は両症状期間が一致していた。また同時に発音障害の自覚もあった。 円板前方転位があると認められない6例では, 顎関節と舌の症状側の一致は1例で, 症状期間が一致している例はなかった。 Isbergらが報告した症例に相当すると思われる2例の病態を調べるために検査を実施した。すなわち顎関節の知覚を支配している耳介側頭神経を麻酔し顎関節痛をとり除くと, 外側翼突筋のスパズムが消失し, 舌神経への圧迫がなくなるため, 舌の知覚が改善するというもので, Isbergらは7例全例に舌の知覚改善を確認したと報告している。 2例の症状側顎関節の耳介側頭神経領域に2%キシロカインを注射し, 10分後の舌の知覚を2点識別法により測定した。1例は知覚改善し1例は変化がなかった。したがって, 顎関節症由来の舌症状は, Isbergらが報告したものよりもさらに稀なものと考えられた。
ISSN:0915-3004
1884-4308
DOI:10.11246/gakukansetsu1989.7.75