日本人がん患者のイリノテカン個別化治療実現に向けて:UGT1A1遺伝子多型(28及び6)の意義について
「1. はじめに」近年, 薬の有効性や副作用の個人差の要因として, 薬物代謝・動態に関連する遺伝子多型の関与が注目され, 遺伝子診断に基づき適切な薬剤の選択及び投与量設定を行うテーラーメイド医療(患者個別化治療)の実現を目指すゲノム薬理学研究は, この数年で急速に進展した. ハプロタイプ(染色体上の個別の遺伝子多型の組み合わせ)を含めて, 遺伝子多型診断の有用性が明らかにされた例も多く, テーラーメイド医療は現実のものとなりつつある. 本稿で紹介する抗がん剤イリノテカンに関しても, 個別化治療の対象薬剤として, 2000年前後より国内外の多くの研究が進められてきた. カンプトテシン誘導体のイリ...
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Published in | YAKUGAKU ZASSHI Vol. 128; no. 4; pp. 575 - 584 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本薬学会
2008
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ISSN | 0031-6903 |
Cover
Summary: | 「1. はじめに」近年, 薬の有効性や副作用の個人差の要因として, 薬物代謝・動態に関連する遺伝子多型の関与が注目され, 遺伝子診断に基づき適切な薬剤の選択及び投与量設定を行うテーラーメイド医療(患者個別化治療)の実現を目指すゲノム薬理学研究は, この数年で急速に進展した. ハプロタイプ(染色体上の個別の遺伝子多型の組み合わせ)を含めて, 遺伝子多型診断の有用性が明らかにされた例も多く, テーラーメイド医療は現実のものとなりつつある. 本稿で紹介する抗がん剤イリノテカンに関しても, 個別化治療の対象薬剤として, 2000年前後より国内外の多くの研究が進められてきた. カンプトテシン誘導体のイリノテカンは, 肺がん, 消化器系がんなどに広く適用されてきたが, ときとして重篤な下痢や白血球減少などを引き起こすことが問題とされてきた. イリノテカンはプロドラッグであり, 肝のカルボキシルエステラーゼによりトポイソメラーゼI阻害活性を有するSN-38に変換され, 1)その後UGT1A1等によりSN-38Gとなり不活性化される. 2) |
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ISSN: | 0031-6903 |