NM441のヒト糞便内細菌叢に対する影響

新しく開発されたプロドラッグ型のキノロン系合成抗菌薬であるNM441を健康成人7例に対し, 活性本体NM394換算量として100mgを含有するNM441錠を2錠, すなわち200mgを1日2回, 8日間経口投与し, 糞便内細菌叢への影響をみるとともに, 糞便内薬物濃度および糞便から分離した種々の細菌のNM394およびその他の薬剤に対する感受性を測定した。併せて, 体内動態および副作用と臨床検査値への影響について検討し, 次のような結果を得た。 1) 糞便内細菌叢では全例で好気性菌のEscherichia coli, Klebsiella sp., Citrobacter sp., およびEnt...

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Published in日本化学療法学会雑誌 Vol. 44; no. Supplement1; pp. 207 - 220
Main Authors 富永, 薫, 大津, 寧, 長井, 健祐, 丸岡, 隆之, 山田, 孝, 吉永, 陽一郎, 山下, 文雄, 津村, 直樹, 織田, 慶子, 山田, 秀二, 阪田, 保隆, 本廣, 孝, 半田, 祥一, 升永, 憲治, 加藤, 裕久, 沖, 眞一郎, 池沢, 滋, 松尾, 勇作
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本化学療法学会 25.03.1996
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ISSN1340-7007
1884-5886
DOI10.11250/chemotherapy1995.44.Supplement1_207

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Summary:新しく開発されたプロドラッグ型のキノロン系合成抗菌薬であるNM441を健康成人7例に対し, 活性本体NM394換算量として100mgを含有するNM441錠を2錠, すなわち200mgを1日2回, 8日間経口投与し, 糞便内細菌叢への影響をみるとともに, 糞便内薬物濃度および糞便から分離した種々の細菌のNM394およびその他の薬剤に対する感受性を測定した。併せて, 体内動態および副作用と臨床検査値への影響について検討し, 次のような結果を得た。 1) 糞便内細菌叢では全例で好気性菌のEscherichia coli, Klebsiella sp., Citrobacter sp., およびEnterobacter sp.等のEnterobacteriaceaeは投与期間中に減少し検出限界以下となった。その他の好気性のグラム陰性桿菌やグラム陽性菌のStaphylococcus sp., Enterococcussp. も投与期間中に減少し, 総好気性菌数は減少した。Yeast like organismでは投与期間中および投与終了後に一時的に増加傾向を示したが, 一定の変化を認めなかった。嫌気性菌のBifidobacteriumおよびBacteroides fragilis groupの菌数に変化はなかったが, Veillonella, Fusobacterium, Lecithinase (+) Clostridiumは投与期間中に減少または検出限界以下となった。Lactobacillusは3例で投与期間中に減少した。しかし, 総嫌気性菌数に変化は認められなかった。これらの変化は投与終了後に投与前の状態まで回復した。 2) Clostridium diffcileは投与開始後から投与終了30日後までに2例から分離され, 同日にD-1antigenも500ng/g検出され, この2例中1例ではD-1 antigenに対する血清中の中和抗体価が顕著に上昇した。その他の5例中2例では投与終了後にD-1 antigenが検出された。投与期間中は全例でC. difficileおよびD-1 antigenともに検出されなかった。 3) 投与期間中に全例で糞便内にNM394が検出され, その濃度は320~1,491μg/gで, 7例中5例は投与終了時が最も高い濃度であった。7例中3例は投与終了後NM394は検出限界以下で, 3例は投与終了後3日目まで, 1例は投与終了後5日目まで検出された。 4) 糞便から分離されたグラム陽性菌中Staphylococcus aureus, α-hemolyticstreptococci, Enterococcusfaecium, Group D streptococciに対するNM394のMICは, ofloxacin (OFLX), ciprofloxacin (CPFX), tosufloxacin (TFLX), sparfloxacin (SPFX) に同じか類似し, Staphylococcus epidermidis, その他のcoagulase-negative staphylococci, Enterococczts avium, Enterococcus faecalisに対するNM394のMICはTFLXより大であり, OFLX, CPFX, SPFXと同じか類似していた。グラム陰性菌中E. coli, Enterobacter cloacaeに対するNM394のMICはCPFX, TFLX, SPFXと同じか類似し, OFLX, fleroxacinより小であった。Klebsiella pneumoniaeに対するNM394のMICはCPFXより大で, 他の4薬剤と同じか類似していた。Citrobacter freundiiに対するNM394のMICはCPFXと類似し, 他の4薬剤より小であった。嫌気性菌のB. fragilisgroup中B. fragilisに対するNM394のMICはTFLXより大で, 他の4薬剤と同じか類似し, やや弱い抗菌力を示した。その他のB. fragilisgroupに対するNM394の抗菌力はTFLXを除く他のキノロン薬と同様に弱かった。 5) 初回投与時の血漿中NM394濃度の薬物動態パラメータTmax, CmaxおよびAUC0~12は各々2.07h, 0.95μg/mlおよび4.14μg・h/mlであり, 8日間投与終了時のパラメータもこれらの値とほぼ一致し, 蓄積性はないものと考えられた。また, 各パラメータおよび尿中排泄率は臨床第I相試験時の値とほぼ一致した。 6) 下痢などの副作用は全例に認められず, 臨床検査値では本剤によると考えられる異常は認められなかった。
ISSN:1340-7007
1884-5886
DOI:10.11250/chemotherapy1995.44.Supplement1_207