上顎癌治療法の変遷と成績

当科での上顎癌の治療は1940年代から放射線を主体とした方法から始まり, 当時の治療成績は5年租生存率で30%台にとどまっており, 顔面疲痕拘縮や骨髄炎も高率にみられた。治療成績向上と顔面形態・機能保存の両立を目指し, 1960年代後半からは佐藤らの三者併用療法をmodifiedした形の治療法を行い, その成績は, 1970年から1980年までの症例で5年累積生存率41.8%が得られていたが, さらなる向上を目指しCT, MRIによる画像診断を取り入れ, それまでの単純および断層写真と視診による診断に基づく三者併用療法から, 初診時の腫瘍の進展範囲をCT等で正確に把握し, 術前療法を施行しなが...

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Published in耳鼻咽喉科展望 Vol. 44; no. 3; pp. 180 - 189
Main Authors 保喜, 克文, 米川, 博之, 三谷, 浩樹, 苦瓜, 知彦, 鎌田, 信悦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 耳鼻咽喉科展望会 15.06.2001
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ISSN0386-9687
1883-6429
DOI10.11453/orltokyo1958.44.180

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Summary:当科での上顎癌の治療は1940年代から放射線を主体とした方法から始まり, 当時の治療成績は5年租生存率で30%台にとどまっており, 顔面疲痕拘縮や骨髄炎も高率にみられた。治療成績向上と顔面形態・機能保存の両立を目指し, 1960年代後半からは佐藤らの三者併用療法をmodifiedした形の治療法を行い, その成績は, 1970年から1980年までの症例で5年累積生存率41.8%が得られていたが, さらなる向上を目指しCT, MRIによる画像診断を取り入れ, それまでの単純および断層写真と視診による診断に基づく三者併用療法から, 初診時の腫瘍の進展範囲をCT等で正確に把握し, 術前療法を施行しながらその効果に応じた切除を行う方法に切り替えた。その結果, 1981年から1998年までの一塊切除症例では化学療法併用の有無の違いによりそれぞれ5年累積生存率69.7%, 61.0%が得られ, それまでの成績に対し20%以上の向上を果たした。上顎近傍には眼球等の重要臓器があり, 顔面形態の保存を含めたQOLを考慮した切除と根治性のさらなる向上が求められており, 当科における上顎癌治療法の変遷と成績について報告する。
ISSN:0386-9687
1883-6429
DOI:10.11453/orltokyo1958.44.180