日本語教育の公的支援を通じた国家と市民の持続可能な関係 親子の母語を大切にする地域日本語教室の実践者の語りから

公的支援を受けている地域日本語教室は自主性をどう保ち,理想の活動が行えるか。本研究では日本語と母語両方を重視する運営者兼実践者の語りに着目し,日本語教育の法令・施策に潜む動員モデルへの対応をアナキズムの観点から分析した。また母語支援の動機に迫り,多様性を理解し尊重する社会のあり方を検討した。結果,調査協力者は公の要求に応じつつ,手続き上のやりとりを通じて親子の母語の大切さを対話的に訴え,協同で最適解を探っていた。ここから国家と市民の関係を持続可能にするアナキズムが確認された。また活動の中で顔のみえる子供たちとの出会いが動機となり,それが調査協力者との互酬関係を形成していた。ここに各人が不足分を...

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Published in言語文化教育研究 Vol. 20; pp. 180 - 200
Main Author 中川, 康弘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 言語文化教育研究学会:ALCE 23.12.2022
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ISSN2188-9600
DOI10.14960/gbkkg.20.180

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Summary:公的支援を受けている地域日本語教室は自主性をどう保ち,理想の活動が行えるか。本研究では日本語と母語両方を重視する運営者兼実践者の語りに着目し,日本語教育の法令・施策に潜む動員モデルへの対応をアナキズムの観点から分析した。また母語支援の動機に迫り,多様性を理解し尊重する社会のあり方を検討した。結果,調査協力者は公の要求に応じつつ,手続き上のやりとりを通じて親子の母語の大切さを対話的に訴え,協同で最適解を探っていた。ここから国家と市民の関係を持続可能にするアナキズムが確認された。また活動の中で顔のみえる子供たちとの出会いが動機となり,それが調査協力者との互酬関係を形成していた。ここに各人が不足分をネットワークで支え合い,豊かさを分かち合うコンヴィヴィアリティが見出された。同時に日本語偏重の社会システムを変えるための環境作りや周囲への働きかけの必要性が,実践者,研究者の役割として示唆された。
ISSN:2188-9600
DOI:10.14960/gbkkg.20.180