弛緩部型真珠腫に対する適切な術式選択の基準について

後天性中耳真珠腫に対して私共は二つの基本的な考えに基づいて手術を行っている。一つは可及的な術後の生理的形態・機能の維持すなわち外耳道後壁と中耳腔粘膜の保存である。他方は真珠腫の進展範囲と, 上鼓室・乳突洞の粘膜の残り具合など真珠腫の病態に応じた術式の選択である。 術式選択基準の根拠となるために検討した対象は1988年から2003年までの15年間に当教室で行われた弛緩部型真珠腫の初回手術例である。これら弛緩部型真珠腫における術後の再発率ならびに聴力改善成績の分析を行った。とくに1988年から1995年までの8年間における真珠腫の術後再発率などの検討から, 1996年に病態による術式選択の基準を設...

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Published in耳鼻咽喉科展望 Vol. 48; no. 1; pp. 18 - 27
Main Authors 小島, 博己, 志和, 成紀, 田中, 康弘, 宮崎, 日出海, 森山, 寛, 吉田, 隆一, 谷口, 雄一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 耳鼻咽喉科展望会 15.02.2005
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ISSN0386-9687
1883-6429
DOI10.11453/orltokyo1958.48.18

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Summary:後天性中耳真珠腫に対して私共は二つの基本的な考えに基づいて手術を行っている。一つは可及的な術後の生理的形態・機能の維持すなわち外耳道後壁と中耳腔粘膜の保存である。他方は真珠腫の進展範囲と, 上鼓室・乳突洞の粘膜の残り具合など真珠腫の病態に応じた術式の選択である。 術式選択基準の根拠となるために検討した対象は1988年から2003年までの15年間に当教室で行われた弛緩部型真珠腫の初回手術例である。これら弛緩部型真珠腫における術後の再発率ならびに聴力改善成績の分析を行った。とくに1988年から1995年までの8年間における真珠腫の術後再発率などの検討から, 1996年に病態による術式選択の基準を設定した。今回は15年間について1996年を境とした前半の8年間と後半の7年間に分けて, 再発率 (一時的に行われた後壁保存術式cana wall upにおける) と聴力改善成績を比較してみた。 再発率の年代別比較で, 後半に明らかな改善を認めた。また聴力改善については, 両期間とも良好な聴力改善が得られた。この結果から, 術者の技量の向上や炎症の軽症化とともに, 1996年に定めた病態別の術式選択が妥当であったという結果を得ることができたので報告する。
ISSN:0386-9687
1883-6429
DOI:10.11453/orltokyo1958.48.18