頚部リンパ節結核で発見され, 多彩な胸部異常陰影を呈した成人T細胞性白血病の1例

症例は59歳男性, 和歌山県出身. 頚部リンパ節腫脹, 発熱, 食欲不振にて近医を受診し, 肝左葉から膵頭部におよぶ腫瘤と左肺野に多発性の結節状陰影を指摘され, 精査加療目的で入院した. 頚部リンパ節生検にてガフキー5号を認め, リンパ節結核と診断した. しかし, その組織像は典型的な結核組織像とは異なり, 無反応性壊死性病巣を呈していた. また, 異型リンパ球を伴う白血球増多, 成人T細胞性白血病 (以下ATL) ウイルス抗体陽性よりくすぶり型ATLと診断した. 抗結核剤にて良好に経過したが, 治療後ATLは急性転化し, 治療の効果なく呼吸不全で死亡した. 剖検肺には間質に線維化を認め, A...

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Published in日本胸部疾患学会雑誌 Vol. 30; no. 12; pp. 2128 - 2133
Main Authors 鈴木, 俊介, 大久保, 隆男, 藤田, 浩之, 池田, 大忠, 府川, 仁哉, 毛利, 博, 中谷, 行雄
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 社団法人 日本呼吸器学会 25.12.1992
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ISSN0301-1542
1883-471X
DOI10.11389/jjrs1963.30.2128

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Summary:症例は59歳男性, 和歌山県出身. 頚部リンパ節腫脹, 発熱, 食欲不振にて近医を受診し, 肝左葉から膵頭部におよぶ腫瘤と左肺野に多発性の結節状陰影を指摘され, 精査加療目的で入院した. 頚部リンパ節生検にてガフキー5号を認め, リンパ節結核と診断した. しかし, その組織像は典型的な結核組織像とは異なり, 無反応性壊死性病巣を呈していた. また, 異型リンパ球を伴う白血球増多, 成人T細胞性白血病 (以下ATL) ウイルス抗体陽性よりくすぶり型ATLと診断した. 抗結核剤にて良好に経過したが, 治療後ATLは急性転化し, 治療の効果なく呼吸不全で死亡した. 剖検肺には間質に線維化を認め, ATL細胞の浸潤とサイトメガロウイルス感染の関与が考えられた. ATLの肺病変についての報告は近年多いが, 結核症との合併についての報告は少ない. 免疫能低下時の結核症感染病態および結核症とATL急性転化との関係について, 本例は示唆に富む症例と思われ報告した.
ISSN:0301-1542
1883-471X
DOI:10.11389/jjrs1963.30.2128