肋骨弓下切開と有茎広背筋弁を用いた胸膜肺全摘術 びまん性悪性胸膜中皮腫に対する合理的術式の試み

びまん性悪性胸膜中皮腫は治療抵抗性の予後不良な疾患である.手術が唯一根治的ではあるが, 侵襲も大きいため適応は制限されている.今回4例の本症患者に対し, 術式に工夫を加えた胸膜肺全摘術を施行し, 安全性, 確実性の両面から満足できる結果を得た.まず皮膚切開を, 通常の後側方切開をやや背側下方へずらし, その尾側端をそのまま延長させて前方で肋骨弓を横切り, 肋骨弓下へと到る切開とした.これにより良好な術野が確保され, 特に通常は困難とされる横隔膜面の処置が容易, 確実となった.第二に心膜や横隔膜の再建に有茎広背筋弁を使用した.その利点は異物を用いないこと以外に, 気管支断端の予防的被覆や, 臨機...

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Published in日本呼吸器外科学会雑誌 Vol. 14; no. 2; pp. 99 - 104
Main Authors 石田, 博徳, 阿部, 典文, 岡田, 晋一郎, 宮田, 道夫, 長野, 真, 小檜山, 律, 目黒, 浩昭
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会 15.03.2000
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ISSN0919-0945
1881-4158
DOI10.2995/jacsurg.14.99

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Summary:びまん性悪性胸膜中皮腫は治療抵抗性の予後不良な疾患である.手術が唯一根治的ではあるが, 侵襲も大きいため適応は制限されている.今回4例の本症患者に対し, 術式に工夫を加えた胸膜肺全摘術を施行し, 安全性, 確実性の両面から満足できる結果を得た.まず皮膚切開を, 通常の後側方切開をやや背側下方へずらし, その尾側端をそのまま延長させて前方で肋骨弓を横切り, 肋骨弓下へと到る切開とした.これにより良好な術野が確保され, 特に通常は困難とされる横隔膜面の処置が容易, 確実となった.第二に心膜や横隔膜の再建に有茎広背筋弁を使用した.その利点は異物を用いないこと以外に, 気管支断端の予防的被覆や, 臨機応変に他の重要臓器の被覆にも応用できる点であった.以上に留意して行った4例の本術式の平均手術時間は6時間25分, 出血量は1, 260mlであり, 侵襲は許容範囲であった.術式に工夫を加えることで, 手術適応をさらに拡大したい.
ISSN:0919-0945
1881-4158
DOI:10.2995/jacsurg.14.99