鈍的腹部外傷による腸骨動脈損傷の検討 自験3例を中心として

鈍的腹部外傷による腸骨動脈損傷例を3例経験したので報告する. 症例はすべて男性で, バイクまたは乗用車による交通外傷にて腹部を鈍的に打撲し腸骨動脈閉塞をきたしたため緊急手術を施行した. このうち2例は術後腎不全を合併し, 1例は長期の血液透析にて回復したものの1例は失った. 合併損傷としては骨盤骨折と腸間膜損傷が1例ずつに認められた. 血管損傷の状態としては1例は不完全断裂の状態であったが, 他の2例はそれぞれ内膜および中膜解離の状態で, 外見上はとくに異常は認めなかった. 本症は文献的にまれであり, 合併損傷を伴うことが多く, 血管閉塞症状が徐々に起こってくるという特徴のため確定診断がしばし...

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Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 22; no. 5; pp. 441 - 445
Main Authors 中山, 義博, 内藤, 光三, 湊, 直樹, 上野, 哲哉, 須田, 久雄, 伊藤, 翼, 夏秋, 正文
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 15.09.1993
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ISSN0285-1474
1883-4108
DOI10.4326/jjcvs.22.441

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Summary:鈍的腹部外傷による腸骨動脈損傷例を3例経験したので報告する. 症例はすべて男性で, バイクまたは乗用車による交通外傷にて腹部を鈍的に打撲し腸骨動脈閉塞をきたしたため緊急手術を施行した. このうち2例は術後腎不全を合併し, 1例は長期の血液透析にて回復したものの1例は失った. 合併損傷としては骨盤骨折と腸間膜損傷が1例ずつに認められた. 血管損傷の状態としては1例は不完全断裂の状態であったが, 他の2例はそれぞれ内膜および中膜解離の状態で, 外見上はとくに異常は認めなかった. 本症は文献的にまれであり, 合併損傷を伴うことが多く, 血管閉塞症状が徐々に起こってくるという特徴のため確定診断がしばしば困難である. しかし, 放置すると高頻度に下肢の壊死を起こすため, 迅速な診断と血行再建が必要である. これを防ぐためには本症の可能性を常に考えておくこととともに, 下肢の注意深い観察が必要である.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.22.441