前立腺の細胞機能に関する研究 1. ラット前立腺上皮の分離と初代培養

正常 Wistar 系雄ラットの前立腺より, 比較的短期間に上皮細胞を分離し, 初代培養に成功した. ミンチした前立腺組織を0.25%トリプシン, 0.1%コラジネースの酵素処理により, 前立腺組織からの細胞分離が容易であった. さらに10%仔牛胎児血清を加えたMEM培地にて, 32℃の比較的低温に保持することにより, 線維芽細胞を抑制することができた. 培養開始後10~14日で confluent となったが, この時期の細胞について, Acid phosphatase および分泌蛋白である prostatein 染色をおこなった所, いずれも陽性所見を得た. また形態的には培養細胞は多角形...

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Published in日本泌尿器科學會雑誌 Vol. 78; no. 6; pp. 1084 - 1091
Main Authors 久米, 隆, 国富, 公人, 武田, 繁雄, 竹中, 生昌, 松岡, 則良, 三宅, 茂樹, 武田, 祐輔, 安川, 明広, 岡, 保紀, 安元, 章浩, 小林, 勲勇
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本泌尿器科学会 20.06.1987
The Japanese Urological Association
社団法人日本泌尿器科学会
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ISSN0021-5287
1884-7110
DOI10.5980/jpnjurol1928.78.6_1084

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Summary:正常 Wistar 系雄ラットの前立腺より, 比較的短期間に上皮細胞を分離し, 初代培養に成功した. ミンチした前立腺組織を0.25%トリプシン, 0.1%コラジネースの酵素処理により, 前立腺組織からの細胞分離が容易であった. さらに10%仔牛胎児血清を加えたMEM培地にて, 32℃の比較的低温に保持することにより, 線維芽細胞を抑制することができた. 培養開始後10~14日で confluent となったが, この時期の細胞について, Acid phosphatase および分泌蛋白である prostatein 染色をおこなった所, いずれも陽性所見を得た. また形態的には培養細胞は多角形で比較的薄く, 僅かに微絨毛をみとめ, 伸展した細胞質突起部分および核周囲のゴルジ装置付近に一致して多数の分泌顆粒をみとめた. 透過切片では分泌細胞の特徴である核周辺の脂肪滴, ライソゾーム, 分泌顆粒さらには滑面および粗面小胞体の発育が良好で, 自由表面に接しては空胞状の cisternae の拡張がみとめられた. 以上の成績から, 培養された細胞は前立腺の上皮細胞と思われ, 今後前立腺機能さらには発癌機序へのアプローチとして好材料となるものと考える.
ISSN:0021-5287
1884-7110
DOI:10.5980/jpnjurol1928.78.6_1084