高校生の金融リテラシーとライフスタイル 大規模アンケート調査に基づく実証分析

金融に関する知識 (金融リテラシー) について岡山県内の高校生約 5500 人を対象にアンケート調査を実施し、その調査結果に基づき実証分析をおこなった。本調査の実施は高等学校の協力により行われたため、回答者がアンケート調査に積極的な者に偏らないという意味では標本の偏りが小さい。アンケートの前半では回答者の金融リテラシーのレベルを測る質問を、後半では考え方および行動パターン(ライフスタイル)を聞く質問を設けた。この 2 つの関係を調べたところ、「漠然とした進学意識や就業意識」を有する回答者は金融リテラシーのレベルが低くなる傾向があることが明らかになった。LASSO を用いて金融リテラシーに影響を...

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Published in生活経済学研究 Vol. 53; pp. 15 - 30
Main Authors 佐々木, 昭洋, 渡辺, 寛之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 生活経済学会 2021
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ISSN1341-7347
2424-1288
DOI10.18961/seikatsukeizaigaku.53.0_15

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Summary:金融に関する知識 (金融リテラシー) について岡山県内の高校生約 5500 人を対象にアンケート調査を実施し、その調査結果に基づき実証分析をおこなった。本調査の実施は高等学校の協力により行われたため、回答者がアンケート調査に積極的な者に偏らないという意味では標本の偏りが小さい。アンケートの前半では回答者の金融リテラシーのレベルを測る質問を、後半では考え方および行動パターン(ライフスタイル)を聞く質問を設けた。この 2 つの関係を調べたところ、「漠然とした進学意識や就業意識」を有する回答者は金融リテラシーのレベルが低くなる傾向があることが明らかになった。LASSO を用いて金融リテラシーに影響をおよぼすライフスタイルの重要度を比較したところ、「漠然とした進学意識や就業意識」は金融リテラシーに対して相対的に強い負の影響を有することを確認した。このようなライフスタイルをもつ高校生は金融リテラシーの欠如により、将来の資産運用から生じる所得が減少する可能性がある。そのうえ Nishimura and Yagi (2019) の議論を踏まえると、自己決定の程度を低める傾向はそれ自体が幸福感を低める要因となる。したがって二重の意味で厚生が損なわれることになるため、その対策となるような個人のライフスタイルを考慮した金融経済教育の重要性が示唆される。
ISSN:1341-7347
2424-1288
DOI:10.18961/seikatsukeizaigaku.53.0_15