働き方改革が仕事成果や生活時間に与える多様な影響に関する実証分析 労働時間の質の違いに着目して

本稿では、労働時間の質的な違いを考慮した分析を行い、働き方改革がもたらす効果について議論する。具体的には、総労働時間を本来業務・周辺雑務・手待ち時間の3つに分割して、その違いが仕事満足度、仕事負荷、健康、賃金に与える影響を分析した。59歳以下の正社員約1.7万人の個票データを分析した結果、本来業務時間が37時間のとき、仕事満足度が最大となった。生活時間との関係では、手待ち時間の増加は睡眠時間に、本来業務時間の削減は家事・育児時間に、周辺雑務時間の削減は自由時間の創出につながっていた。また、週労働時間の増加が、家事・育児時間における相対的貧困に陥る確率を高めることがわかった。多様な働き方が3つの...

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Published in生活経済学研究 Vol. 51; pp. 63 - 76
Main Authors 久米, 功一, 萩原, 牧子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 生活経済学会 2020
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ISSN1341-7347
2424-1288
DOI10.18961/seikatsukeizaigaku.51.0_63

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Summary:本稿では、労働時間の質的な違いを考慮した分析を行い、働き方改革がもたらす効果について議論する。具体的には、総労働時間を本来業務・周辺雑務・手待ち時間の3つに分割して、その違いが仕事満足度、仕事負荷、健康、賃金に与える影響を分析した。59歳以下の正社員約1.7万人の個票データを分析した結果、本来業務時間が37時間のとき、仕事満足度が最大となった。生活時間との関係では、手待ち時間の増加は睡眠時間に、本来業務時間の削減は家事・育児時間に、周辺雑務時間の削減は自由時間の創出につながっていた。また、週労働時間の増加が、家事・育児時間における相対的貧困に陥る確率を高めることがわかった。多様な働き方が3つのタイプの労働時間に与える影響を分析した結果、雇用型テレワークの実施は、本来業務時間を減らし、家事・育児との両立を促すが、周辺雑務時間や手待ち時間の増加を通して、自由時間や睡眠時間の減少を招く可能性があることがわかった。これらの結果は、働き方改革の諸施策が、労働時間の質の違いを通じて、生活時間に異なる影響を与えることを示唆している。
ISSN:1341-7347
2424-1288
DOI:10.18961/seikatsukeizaigaku.51.0_63