前立腺移行上皮癌症例および膀胱移行上皮癌の前立腺浸潤例の検討 II) 膀胱移行上皮癌の前立腺浸潤例との対比

前立腺移行上皮癌は, 膀胱移行上皮癌の前立腺浸潤と病理学的にも鑑別が難しいことが時にある. 頻度的には膀胱癌の前立腺浸潤によるものの方が原発性前立腺移行上皮癌よりも多いことより, 本報ではその検討を行った. 膀胱移行上皮癌に対して膀胱前立腺全摘除術を施行した173症例の前立腺組織を調べ, 前立腺に何ら悪性所見を認めない“病変”群と, 前立腺に膀胱移行上皮癌の浸潤を認める“前立腺浸潤”群の2群に分け, それらの臨床及び病理所見を検討した. その結果,“前立腺浸潤群”は“病変”群と比べ, (1)排尿困難が多い, (2)浸潤性癌が多く, 細胞の異型度が強い, (3)尿道再発が多いという特徴がみられ,...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本泌尿器科學會雑誌 Vol. 78; no. 8; pp. 1372 - 1378
Main Authors 垣添, 忠生, 鳶巣, 賢一, 高井, 計弘, 岸, 紀代三, 松本, 恵一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本泌尿器科学会 20.08.1987
The Japanese Urological Association
社団法人日本泌尿器科学会
Online AccessGet full text
ISSN0021-5287
1884-7110
DOI10.5980/jpnjurol1928.78.8_1372

Cover

More Information
Summary:前立腺移行上皮癌は, 膀胱移行上皮癌の前立腺浸潤と病理学的にも鑑別が難しいことが時にある. 頻度的には膀胱癌の前立腺浸潤によるものの方が原発性前立腺移行上皮癌よりも多いことより, 本報ではその検討を行った. 膀胱移行上皮癌に対して膀胱前立腺全摘除術を施行した173症例の前立腺組織を調べ, 前立腺に何ら悪性所見を認めない“病変”群と, 前立腺に膀胱移行上皮癌の浸潤を認める“前立腺浸潤”群の2群に分け, それらの臨床及び病理所見を検討した. その結果,“前立腺浸潤群”は“病変”群と比べ, (1)排尿困難が多い, (2)浸潤性癌が多く, 細胞の異型度が強い, (3)尿道再発が多いという特徴がみられ, これは第1報の原発性前立腺移行上皮癌の特徴と極めて類似していた. さらに, 前立腺移行上皮癌の発生起源, その進展, さらに膀胱移行上皮癌, その他の尿路上皮癌との関係について, 解剖学的, 発生学的見地, 及び発癌のメカニズムより検討した. 治療の実際的な観点からすると, 前立腺に移行上皮癌を認めた場合は, 原発性移行上皮癌の存在を認めるものの, 膀胱癌 (又は多発性尿路上皮癌) の1特殊型の可能性も強く, 前立腺以外の尿路を十分検索したうえで, 膀胱前立腺全摘除術±尿道摘除術, 骨盤内リンパ節郭清術, 術後全身化学療法をおこなうのが良いと考えた.
ISSN:0021-5287
1884-7110
DOI:10.5980/jpnjurol1928.78.8_1372