腫瘍口側で腸間膜内に穿通し糞便腫瘤を形成したS状結腸癌の1例
症例は39歳の女性.主訴は下腹部痛で腹膜刺激症状は認めず, 鎮痛剤で一時, 症状は軽快したが, 腹膜刺激症状の出現と画像上腹水貯留を認めたため緊急手術を施行. 開腹所見でS状結腸に腫瘤と口側腸間膜に暗褐色の膨隆を認めた. 腹腔内に膿性腹水を認めたが, 糞便汚染は認めなかった. 以上よりS状結腸癌の腸間膜への穿通を考え, 腫瘍および汚染腸間膜を切除し, Hartmann手術を施行.切除標本ではS状結腸に全周性2型腫瘍を認め, 口側腸間膜側の5.0cm大の穿孔より腸間膜内に約800gの糞便貯留を認めた. 術後経過は良好で化学療法施行後退院となった. 大腸穿孔は一般に糞便性腹膜炎を伴い重篤な経過をと...
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Published in | 日本消化器外科学会雑誌 Vol. 35; no. 6; pp. 687 - 691 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本消化器外科学会
2002
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Online Access | Get full text |
ISSN | 0386-9768 1348-9372 |
DOI | 10.5833/jjgs.35.687 |
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Summary: | 症例は39歳の女性.主訴は下腹部痛で腹膜刺激症状は認めず, 鎮痛剤で一時, 症状は軽快したが, 腹膜刺激症状の出現と画像上腹水貯留を認めたため緊急手術を施行. 開腹所見でS状結腸に腫瘤と口側腸間膜に暗褐色の膨隆を認めた. 腹腔内に膿性腹水を認めたが, 糞便汚染は認めなかった. 以上よりS状結腸癌の腸間膜への穿通を考え, 腫瘍および汚染腸間膜を切除し, Hartmann手術を施行.切除標本ではS状結腸に全周性2型腫瘍を認め, 口側腸間膜側の5.0cm大の穿孔より腸間膜内に約800gの糞便貯留を認めた. 術後経過は良好で化学療法施行後退院となった. 大腸穿孔は一般に糞便性腹膜炎を伴い重篤な経過をとることが多いが, 自験例のごとく腸間膜へ穿通する症例は極めてまれで, 糞便性腹膜炎のない症例では予後良好であると考えられた. |
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ISSN: | 0386-9768 1348-9372 |
DOI: | 10.5833/jjgs.35.687 |