肝癌における転移能と免疫回避機構

切除肝癌47例を対象としFas, FasLの発現, 血中sFas, sFasL濃度を検討し, 転移・予後との関連を評価した. 免疫染色によるFas, FasLの陽性例は各16, 19例であり, 両者の間には逆相関が認められた. 浸潤リンパ球の多くはFas, FasLを発現していた. Fas陽性例で有意にアポトーシスが多く, Fas陽性例は陰性例に比べ有意に再発率が低かった. またFasL陽性例では再発率が高い傾向にあった. 多変量解析ではFasは独立した再発予測因子であった. 血中sFasは健康人‹肝硬変患者›肝癌患者であり, sFasLは健康人=肝硬変患者>肝癌患者であったが, 肝癌に...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 33; no. 4; pp. 537 - 542
Main Authors 中野, 博重, 青松, 幸雄, 長尾, 美津男, 久永, 倫聖, 山田, 高嗣, 中島, 祥介, 高, 済峯, 金廣, 裕道
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2000
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.33.537

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Summary:切除肝癌47例を対象としFas, FasLの発現, 血中sFas, sFasL濃度を検討し, 転移・予後との関連を評価した. 免疫染色によるFas, FasLの陽性例は各16, 19例であり, 両者の間には逆相関が認められた. 浸潤リンパ球の多くはFas, FasLを発現していた. Fas陽性例で有意にアポトーシスが多く, Fas陽性例は陰性例に比べ有意に再発率が低かった. またFasL陽性例では再発率が高い傾向にあった. 多変量解析ではFasは独立した再発予測因子であった. 血中sFasは健康人‹肝硬変患者›肝癌患者であり, sFasLは健康人=肝硬変患者>肝癌患者であったが, 肝癌におけるFas, FasL発現とは相関を認めなかった. 以上より, 肝癌はFas発現を減弱させFasL陽性浸潤リンパ球より逃れることで免疫機構から回避し, 転移能を獲得するものと考えられた. また, sFasは肝硬変ですでに上昇しており, 肝癌の発生にも関与している可能性が示唆された.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.33.537