解明すすむ肝炎ウイルス C型肝炎の臨床的諸問題

前述のごとく, 現在市販のHCV抗体測定法には, 感受性, 特異性などの点でなお問題が残る. それはHCV遺伝子の非構造蛋白の一部を抗原としていることにもよると思われる. そのため, わが国を中心に, 5'-noncoding regionなど構造蛋白を抗原とするより特異的なHCV抗体測定法や, RIA法などによるより感度の優れた測定法の開発研究が盛んに行われている. 前述のPCR法によるHCV RNAの検出もその一つである. また, HCV遺伝子のクローニングに成功したといっても, その全塩基配列が完全に解明されたわけではない. さらに, 研究者間, あるいは日本と米国の間で, 塩...

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Published in日本医科大学雑誌 Vol. 58; no. 5; pp. 493 - 500
Main Author 荒牧, 琢己
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医科大学医学会 15.10.1991
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ISSN0048-0444
1884-0108
DOI10.1272/jnms1923.58.493

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Summary:前述のごとく, 現在市販のHCV抗体測定法には, 感受性, 特異性などの点でなお問題が残る. それはHCV遺伝子の非構造蛋白の一部を抗原としていることにもよると思われる. そのため, わが国を中心に, 5'-noncoding regionなど構造蛋白を抗原とするより特異的なHCV抗体測定法や, RIA法などによるより感度の優れた測定法の開発研究が盛んに行われている. 前述のPCR法によるHCV RNAの検出もその一つである. また, HCV遺伝子のクローニングに成功したといっても, その全塩基配列が完全に解明されたわけではない. さらに, 研究者間, あるいは日本と米国の間で, 塩基配列の相同性に差がみられるなど, 変異の問題も提起されている. このように未解決の基礎的問題が山積する. 本稿では著者らの教室での成績を提示し, HCV感染にかかわる臨床的諸問題を概観したが, いずれにも未解決の部分を残す. しかし, C型肝炎の究明は, まだ端緒についたばかりであり, 近年の技術の発展からすれば, 解明への道程はそう遠くないものと期待される.
ISSN:0048-0444
1884-0108
DOI:10.1272/jnms1923.58.493