二次性上皮小体機能亢進症の外科治療に関する問題点とその対策

慢性腎不全に合併する高度な二次性上皮小体機能亢進症に対する外科治療の必要性とその効果については広く認識されるようになってきた. しかし, 慢性腎不全という背景と上皮小体の持つ特性を考慮すると, いくつかの問題点が存在する. つまり, (1) 異所性, 過剰上皮小体の存在, (2) 甲状腺病変の合併, (3) 術後低Ca血症の治療, (4) 再発, (5) 上皮小体摘出後機能低下症などである. それらの問題に対し, 自験例70例 (亜全摘出術20例, 全摘出後自家移植術50例) を対象に検討を加え対策を考察した. 1) 異所性上皮小体は70例260腺中, thymic tongue内27腺, 甲...

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Published in日本透析療法学会雑誌 Vol. 19; no. 5; pp. 437 - 445
Main Authors 河合, 真千夫, 加納, 忠行, 打田, 和治, 冨永, 芳博, 山田, 宜夫, 高木, 弘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本透析医学会 28.05.1986
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ISSN0911-5889
1884-6211
DOI10.4009/jsdt1985.19.437

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Summary:慢性腎不全に合併する高度な二次性上皮小体機能亢進症に対する外科治療の必要性とその効果については広く認識されるようになってきた. しかし, 慢性腎不全という背景と上皮小体の持つ特性を考慮すると, いくつかの問題点が存在する. つまり, (1) 異所性, 過剰上皮小体の存在, (2) 甲状腺病変の合併, (3) 術後低Ca血症の治療, (4) 再発, (5) 上皮小体摘出後機能低下症などである. それらの問題に対し, 自験例70例 (亜全摘出術20例, 全摘出後自家移植術50例) を対象に検討を加え対策を考察した. 1) 異所性上皮小体は70例260腺中, thymic tongue内27腺, 甲状腺内3腺, 頸動脈周囲2腺, 気管と食道間1腺存在した. また5腺を摘出した症例が1例存在した. 2) 全摘出後自家移植術導入後の50例は全例, 術中4腺以上確認でき, CT, Echogram, 201TICl scintigram併用による術前画像診断が部位診断としても有用であった. 3) 甲状腺病変合併例が70例中15例存在し, 手術中には甲状腺病変の合併を念頭に甲状腺も十分観察が必要であった. 画像診断は甲状腺病変の術前診断としても有用であった. 4) 術後血清Caは速やかに低下し, 頻回の血清Ca濃度の検査と適切なCa補充療法が必要であった. 骨病変の強い症例ほど, Ca補充療法は多量を要した. 5) 再発は亜全摘出術群に2例, 全摘出後自家移植術群に4例みられ, 亜全摘出術群で2例, 全摘出後自家移植術群1例で再手術が必要であった. 6) 術後上皮小体機能低下症により多量なCa補充療法を長期間必要とした症例はなく, 臨床的には術後骨軟化症を呈した症例は存在しなかった. 以上より二次性上皮小体機能亢進症の外科治療に関して, 術前画像診断は上皮小体の部位診断, 合併する甲状腺病変の診断としても有用であり, 確実でより侵襲の少ない手術を可能にした. 全摘出後自家移植術は再発時の摘出が容易で, しかも残存上皮小体機能を調節し得ることより術後の問題点にも対応可能であった.
ISSN:0911-5889
1884-6211
DOI:10.4009/jsdt1985.19.437