補助循環における血液凝固の制御 抗血栓性回路を用いたLow dose systemic heparinizationの有用性

補助循環における血液凝固制御として、我々はヘパリンコーティングを主とした抗血栓性回路を使用し、血液接触面での血栓形成を抑制することで、全身投与するヘパリン量削減を図っている。この抗血栓性回路を用いたLow dose systemic heparinizadonの有用性について検討した。症例は術後補助循環や心肺停止例に対する蘇生手段として使用したPCPS(Percutaneous cardiopulmonary support system)25例、経皮的左心バイパス3例、胸部大動脈手術の術中補助手段としての部分体外循環法6例の計34例である。抗凝固療法は微量ヘパリンを全身投与し、ACT(Act...

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Published in人工臓器 Vol. 23; no. 3; pp. 612 - 617
Main Authors 村田, 聖一郎, 川人, 宏次, 山口, 敦司, 井手, 博文, 井野, 隆史, 水原, 章浩, 安達, 秀雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本人工臓器学会 15.06.1994
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ISSN0300-0818
1883-6097
DOI10.11392/jsao1972.23.612

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Summary:補助循環における血液凝固制御として、我々はヘパリンコーティングを主とした抗血栓性回路を使用し、血液接触面での血栓形成を抑制することで、全身投与するヘパリン量削減を図っている。この抗血栓性回路を用いたLow dose systemic heparinizadonの有用性について検討した。症例は術後補助循環や心肺停止例に対する蘇生手段として使用したPCPS(Percutaneous cardiopulmonary support system)25例、経皮的左心バイパス3例、胸部大動脈手術の術中補助手段としての部分体外循環法6例の計34例である。抗凝固療法は微量ヘパリンを全身投与し、ACT(Activated coagulation time)で、PCPS: 150秒、左心バイパス: 150-200秒、術中部分体外循環: 200秒を目標として管理した。長期生存はPCPS32%(8/25)、左心バイパス0%(0/3)、部分体外循環法67%(4/6)であった。出血に関しては、術後PCPS症例のドレーン出血量は術後3時間目以後は30ml/hour以下であり、また部分体外循環を用いた胸部大動脈手術の術中出血は785±382mlと出血のコントロールは良好であった。循環補助中の出血合併症の発生はなく、また臨床上、剖検上血栓塞栓症の発生はなかった。回路内の血栓形成に関しては、流量0.8-1.0L/min. の低流量で長時間の循環補助をした心筋梗塞後心室中隔穿孔術後症例に対するPCPSの1例に、回路内血栓を認め、回路交換を余儀なくされた以外は、人工肺の血流停滞部やチューブ接続の段差部にわずかな血栓を認めたのみで臨床上問題となるようなものはなかった。このように、抗血栓性補助循環回路を用いたLow dose systemic hepadniza-tionの試みは、出血をコントロールする上で有用であると考えられたが、低流量で長時間使用する症例に対して課題が残った。また、回路内の段差や血液停滞部をなくすような流体力学的効果をもつ形状デザインが重要であると思われた。
ISSN:0300-0818
1883-6097
DOI:10.11392/jsao1972.23.612