下血を主訴とした回腸神経鞘腫の1例

症例は66歳の女性. 下血を主訴に入院. 入院時Hb8.8g/dl, Ht27.8%. 腹部超音波検査, 腹部CT検査にて骨盤内に大きさ6cmの腫瘤を認め, 腹部血管造影検査で上腸間膜動脈より新生血管を受ける腫瘍を認めた. 手術施行するに回腸の腸間膜対側に管外性に発育する直径8cmの腫瘍を認め回腸部分切除を行った. 組織学的には紡錘形の腫瘍細胞の索状配列と核の柵状配列を呈しており, 免疫組織学的検索ではS-100蛋白染色に陰性, NSE染色では陽性であった. 以上により本腫瘍は空腸神経鞘腫と診断した. 小腸の神経鞘腫は比較的まれな疾患であり, 本邦文献上自験例を除き48例の報告を認めるにすぎな...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 29; no. 3; pp. 770 - 774
Main Authors 徳元, 伸行, 岩瀬, 裕郷, 久賀, 克也, 首藤, 潔彦, 福長, 徹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 1996
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.29.770

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Summary:症例は66歳の女性. 下血を主訴に入院. 入院時Hb8.8g/dl, Ht27.8%. 腹部超音波検査, 腹部CT検査にて骨盤内に大きさ6cmの腫瘤を認め, 腹部血管造影検査で上腸間膜動脈より新生血管を受ける腫瘍を認めた. 手術施行するに回腸の腸間膜対側に管外性に発育する直径8cmの腫瘍を認め回腸部分切除を行った. 組織学的には紡錘形の腫瘍細胞の索状配列と核の柵状配列を呈しており, 免疫組織学的検索ではS-100蛋白染色に陰性, NSE染色では陽性であった. 以上により本腫瘍は空腸神経鞘腫と診断した. 小腸の神経鞘腫は比較的まれな疾患であり, 本邦文献上自験例を除き48例の報告を認めるにすぎない. その診断については前述のS-100蛋白染色が特に有用であるとされているが, 本症例のように陰性であった報告例もあり本腫瘍の診断については画像所見, 組織学的所見, 特殊染色などを結合した診断がなされるべきであると考えられる.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.29.770