大学院進学の経済的収益 就業構造基本調査を用いた賃金プレミアムと内部収益率の推計

学校教育は人的資本形成に大きな役割を担っているだけでなく、技術水準の高度化や、さらなるイノベーションの必要性を考えると大学および大学院の担う役割はより重要になってくる。特に近年は、大学院への進学者、修了者は増加傾向にあり、それらの教育効果がどの程度あるかについても、検証が求められてきている。本稿では、大学院卒の就業者と大学卒の就業者の所得格差がどの程度生じているのか、また大学院卒であることによる賃金プレミアムが生じているのかについて、就業構造基本調査のデータを用いて、産業および職種横断的な検討を不平等尺度、賃金関数を用いた推計の2種類により検証した。得られた結論として、第1に、不平等尺度、賃金...

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Published in生活経済学研究 Vol. 50; pp. 1 - 18
Main Authors 村田, 治, 下山, 朗
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 生活経済学会 30.09.2019
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ISSN1341-7347
2424-1288
DOI10.18961/seikatsukeizaigaku.50.0_1

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Summary:学校教育は人的資本形成に大きな役割を担っているだけでなく、技術水準の高度化や、さらなるイノベーションの必要性を考えると大学および大学院の担う役割はより重要になってくる。特に近年は、大学院への進学者、修了者は増加傾向にあり、それらの教育効果がどの程度あるかについても、検証が求められてきている。本稿では、大学院卒の就業者と大学卒の就業者の所得格差がどの程度生じているのか、また大学院卒であることによる賃金プレミアムが生じているのかについて、就業構造基本調査のデータを用いて、産業および職種横断的な検討を不平等尺度、賃金関数を用いた推計の2種類により検証した。得られた結論として、第1に、不平等尺度、賃金関数いずれの場合においても、大学院卒の就業者と大学卒の就業者には所得格差があり、先行研究と整合的な結果が得られた。第2に産業別および職種別の分析の結果では、大学卒の就業者と大学院卒の就業者には格差はあるものの、その大きさは産業によって大きく異なり、従来考えられてきた特定の資格を必要とする産業だけでなく、一般的に大学卒の就業者が多い産業でもある程度の所得格差や賃金プレミアムがみられた。
ISSN:1341-7347
2424-1288
DOI:10.18961/seikatsukeizaigaku.50.0_1