マイクロ波凝固法で経尿道的前立腺切除術時の出血を軽減させる研究 第1報 ファントム及び犬前立腺を用いた基礎的検討

マイクロ波の熱作用を利用して前立腺腫瘍組織を凝固壊死に陥らせたり, あるいはその止血効果により経尿道的切除術の前に施行することで手術操作を容易に施行できるのではないかと考えた. そこで前立腺用マイクロ波凝固アプリケータを試作し, ファントムを用いてその温度分布を基礎的に検討し, さらに犬前立腺に対して凝固実験を行った. マイクロ波をファントムに照射すると, アンテナ周囲に楕円球状の高温度分布層が形成され, 高温度分布層の大きさはマイクロ波のエネルギー, アンテナの形状を変化させることで容易に調節できた. 犬前立腺に出力100Wのマイクロ波を30秒間照射すると, ほぼ全層で組織血流は遮断され,...

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Published in日本泌尿器科學會雑誌 Vol. 79; no. 5; pp. 888 - 898
Main Author 餌取, 和美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本泌尿器科学会 20.05.1988
The Japanese Urological Association
社団法人日本泌尿器科学会
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ISSN0021-5287
1884-7110
DOI10.5980/jpnjurol1928.79.5_888

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Summary:マイクロ波の熱作用を利用して前立腺腫瘍組織を凝固壊死に陥らせたり, あるいはその止血効果により経尿道的切除術の前に施行することで手術操作を容易に施行できるのではないかと考えた. そこで前立腺用マイクロ波凝固アプリケータを試作し, ファントムを用いてその温度分布を基礎的に検討し, さらに犬前立腺に対して凝固実験を行った. マイクロ波をファントムに照射すると, アンテナ周囲に楕円球状の高温度分布層が形成され, 高温度分布層の大きさはマイクロ波のエネルギー, アンテナの形状を変化させることで容易に調節できた. 犬前立腺に出力100Wのマイクロ波を30秒間照射すると, ほぼ全層で組織血流は遮断され, 犬前立腺組織には広範な凝固壊死層が形成された. 照射2週間以後になると12頭中7頭において壊死層脱落の結果, 空洞形成が認められた. 照射後12週には, 5頭中4頭で空洞化した前立腺部は, 上皮によって修復されていた. マイクロ波照射は組織の炭化をおこさず動物実験においても照射後の尿道狭窄, 穿孔などの合併症は認められなかった. 以上の結果から本法は安全であり, 臨床的にも従来の経尿道的切除術の術前補助療法として有用であり, さらに高齢者をはじめとした poorrisk の患者に対して新しい治療法となる可能性が示唆された.
ISSN:0021-5287
1884-7110
DOI:10.5980/jpnjurol1928.79.5_888