抗リン脂質抗体症候群に併存したS状結腸癌の1例

症例は62歳の女性で,C型肝炎で当院内科通院中に血便を来し,精査でS状結腸癌と診断した.31歳時の出産時に肺梗塞の既往があり,また血液検査で抗カルジオリピン・β2-GPI複合体が陽性であり,2004年より抗リン脂質抗体症候群と診断されているため抗凝固療法を行うこととした.僧帽弁置換術後(機械弁)であり,ワルファリンカリウムを内服していたため,未分画ヘパリンに変更した.術前に未分画ヘパリンを中止し,S状結腸切除術を施行した.術直後より抗凝固療法を再開したが,術後に出血を認め腹腔内に血腫を形成した.また抗凝固薬の調整中に,吻合部出血を来し輸血が必要であった.その後に血腫の感染が疑われ,術後63日目...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 44; no. 12; pp. 1624 - 1631
Main Authors 藤谷, 和正, 辻仲, 利政, 三賀森, 学, 平尾, 素宏, 三嶋, 秀行, 安井, 昌義, 宮本, 敦史, 池永, 雅一, 宮崎, 道彦, 辻江, 正徳
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.12.2011
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.44.1624

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Summary:症例は62歳の女性で,C型肝炎で当院内科通院中に血便を来し,精査でS状結腸癌と診断した.31歳時の出産時に肺梗塞の既往があり,また血液検査で抗カルジオリピン・β2-GPI複合体が陽性であり,2004年より抗リン脂質抗体症候群と診断されているため抗凝固療法を行うこととした.僧帽弁置換術後(機械弁)であり,ワルファリンカリウムを内服していたため,未分画ヘパリンに変更した.術前に未分画ヘパリンを中止し,S状結腸切除術を施行した.術直後より抗凝固療法を再開したが,術後に出血を認め腹腔内に血腫を形成した.また抗凝固薬の調整中に,吻合部出血を来し輸血が必要であった.その後に血腫の感染が疑われ,術後63日目に血腫除去術を施行した.術後は経過良好で致命的な血栓症を来さず退院した.抗リン脂質抗体症候群の周術期の抗凝固療法に難渋した症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.44.1624