食道静脈瘤に対する食道離断術について 術後出血例の検討

我々は, 過去15年間に食道静脈瘤直達手術35例を経験した. 手術術式は, 経腹的食道離断術22例(自動吻合器使用例18例, 用手的吻合例4例), 経胸的食道離断術4例, 胃噴門切除4例, 食道粘膜下静脈瘤結紮5例である. 自動吻合器を用いた経腹的食道離断では, 食道の全層離断となるが, このうち7例が死亡しているものの術後の出血は1例も認めていない. 一方, 食道の前壁の筋層は切断するが, 後壁は離断しない用手的吻合例では, 1例が胃静脈瘤からの出血で手術死亡し, 2例が遠隔時食道静脈瘤の再発出血で死亡している. また, 経胸的離断でも, 食道の後壁の筋層の離断は行わないが, 2例は離断部よ...

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Published in医療 Vol. 42; no. 3; pp. 236 - 240
Main Authors 田坂, 裕保, 林, 〓欽, 井上, 啓爾, 瀬戸口, 正幸, 市川, 由紀夫, 古川, 正人, 草野, 敏臣, 田代, 和則, 中田, 俊則, 立花, 一幸
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 国立医療学会 20.03.1988
国立医療学会
Subjects
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ISSN0021-1699
1884-8729
DOI10.11261/iryo1946.42.236

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Summary:我々は, 過去15年間に食道静脈瘤直達手術35例を経験した. 手術術式は, 経腹的食道離断術22例(自動吻合器使用例18例, 用手的吻合例4例), 経胸的食道離断術4例, 胃噴門切除4例, 食道粘膜下静脈瘤結紮5例である. 自動吻合器を用いた経腹的食道離断では, 食道の全層離断となるが, このうち7例が死亡しているものの術後の出血は1例も認めていない. 一方, 食道の前壁の筋層は切断するが, 後壁は離断しない用手的吻合例では, 1例が胃静脈瘤からの出血で手術死亡し, 2例が遠隔時食道静脈瘤の再発出血で死亡している. また, 経胸的離断でも, 食道の後壁の筋層の離断は行わないが, 2例は離断部より下部の食道の静脈瘤より出血が止血ができず死亡し, 1例が遠隔時の静脈瘤出血が認められた. 以上より, 食道の離断はできるかぎり下部が選ばれるべきであり, 摘脾, 胃上部血管郭清, 自動吻合器による食道胃接合部の全層食道離断術は妥当な術式であると考えられた.
ISSN:0021-1699
1884-8729
DOI:10.11261/iryo1946.42.236