肺炎球菌の臨床細菌学的研究 臨床材料からの検出状況, 菌型分布, 薬剤感受性の推移, 特にβ-ラクタム剤耐性菌について
Streptococcus pneumoniae (以下肺炎球菌と記す) は細菌性肺炎, 化膿性髄膜炎, 敗血症, 中耳炎などの原因菌として重要である。肺炎球菌は1881年PASTERにより発見されて以来百余年が経過したが, この間, 次々と優れた抗菌剤が開発され, 中でもペニシリンの発見は本菌感染症の治療に多大な威力を発揮した。このような化学療法の発達普及は本菌感染症を激減させたが, 最近再び病原菌としての重要性が強調されてきている。特に乳幼児, 高年齢者及びハイリスク患者では本菌種による肺炎, 敗血症, 髄膜炎の罹患率, 死亡率が高く, 髄膜炎では他の細菌性のものに比べ神経系の後遺症の発生...
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          | Published in | The Japanese Journal of Antibiotics Vol. 39; no. 3; pp. 783 - 806 | 
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| Main Author | |
| Format | Journal Article | 
| Language | Japanese | 
| Published | 
            公益財団法人 日本感染症医薬品協会
    
        25.03.1986
     | 
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| ISSN | 0368-2781 2186-5477  | 
| DOI | 10.11553/antibiotics1968b.39.783 | 
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| Summary: | Streptococcus pneumoniae (以下肺炎球菌と記す) は細菌性肺炎, 化膿性髄膜炎, 敗血症, 中耳炎などの原因菌として重要である。肺炎球菌は1881年PASTERにより発見されて以来百余年が経過したが, この間, 次々と優れた抗菌剤が開発され, 中でもペニシリンの発見は本菌感染症の治療に多大な威力を発揮した。このような化学療法の発達普及は本菌感染症を激減させたが, 最近再び病原菌としての重要性が強調されてきている。特に乳幼児, 高年齢者及びハイリスク患者では本菌種による肺炎, 敗血症, 髄膜炎の罹患率, 死亡率が高く, 髄膜炎では他の細菌性のものに比べ神経系の後遺症の発生頻度が高いことが指摘されている1)。これと相まつてペニシリン耐性肺炎球菌が世界各地で分離されるに至り, 中には高度の多剤耐性株も認められている2)。このことは本菌感染症の治療に大きな脅威となりつつある。一方, このような背景のもとに肺炎球菌感染症の予防ワクチンが開発され, わが国においても安全性, 抗原性などの検討がすすめられてきた3)。これらの使用にあたつては患者由来株の菌型がワクチンに含まれる菌型であるか否かを疫学的に調査していく必要がある4)。 著者は1975年以来, 肺炎球菌の薬剤感受性について注目してきた5)。そして1980年, ペニシリン耐性肺炎球菌を患者の喀痰から分離した6)。その後の調査でこれらの耐性株の増加傾向が認められている7)。肺炎球菌は病原菌としての重要性は強調されてはいるものの, 臨床材料からの検出状況, 薬剤感受性などの系統的な研究報告は少ない。そこで, 著者は順天堂大学付属病院中央検査室での成績をもとに, これらの点について検討したので得られた知見を報告する。 なお, 以下に述べる薬剤耐性株とは, 非連続的なMICの上昇変異株 (低感受性株ないし中等度MICの耐性株を含む) を耐性株と表現した。 | 
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| ISSN: | 0368-2781 2186-5477  | 
| DOI: | 10.11553/antibiotics1968b.39.783 |