先天性アンチトロンビン欠損症による門脈・腸間膜静脈血栓症の1例

先天性アンチトロンビン(Antithrombin;以下,ATと略記)欠損症による門脈・腸間膜静脈血栓症の1例を経験したので報告する.症例は30歳の男性で,激しい腹痛と嘔吐にて受診した.造影CTにて,門脈(Portal vein;以下,PVと略記)と上腸間膜静脈(Superior mesenteric vein;以下,SMVと略記)の広範囲が血栓により閉塞しており,小腸の一部に著明な壁肥厚を認めた.緊急開腹術を施行したところ,約40cmの長さで空腸が壊死していたため切除し,SMVを切開してFogartyカテーテルで大量の血栓を除去した.血液検査にてAT欠損症と診断し,術後よりヘパリンとAT製剤を...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 44; no. 5; pp. 577 - 583
Main Authors 坂東, 啓介, 和田, 雅孝, 奥田, 耕司, 岡田, 昌生, 三澤, 一仁
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.05.2011
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.44.577

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Summary:先天性アンチトロンビン(Antithrombin;以下,ATと略記)欠損症による門脈・腸間膜静脈血栓症の1例を経験したので報告する.症例は30歳の男性で,激しい腹痛と嘔吐にて受診した.造影CTにて,門脈(Portal vein;以下,PVと略記)と上腸間膜静脈(Superior mesenteric vein;以下,SMVと略記)の広範囲が血栓により閉塞しており,小腸の一部に著明な壁肥厚を認めた.緊急開腹術を施行したところ,約40cmの長さで空腸が壊死していたため切除し,SMVを切開してFogartyカテーテルで大量の血栓を除去した.血液検査にてAT欠損症と診断し,術後よりヘパリンとAT製剤を投与した.術後,門脈血栓は残存したが,側副血行路が発達し,腸管壊死の進展はなかった.現在ワーファリンによる抗凝固療法を継続中であるが,門脈圧亢進症に対する長期的なフォローアップが必要である.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.44.577