広範な門脈腫瘍栓を伴った小型肝癌の1例

肝細胞癌における門脈腫瘍栓は不良な予後因子の一つである.組織学的な門脈浸潤を含めると5cm以下の肝癌においても比較的多くみられるが,2cm以下の肝癌で門脈本幹まで伸展する例は極めてまれである.今回,我々は原発巣12mmでありながら門脈本幹に伸展する肝細胞癌症例を経験した.症例は55歳の男性で,全身倦怠感,食欲低下を主訴に当院受診.腹部超音波検査,CTで左門脈内を中心に本幹へ及ぶ腫瘍塞栓を認めた.腹部血管造影検査では門脈左右分岐部の欠損と同部位の濃染像を認めた.肝左葉+左S1切除,門脈腫瘍栓除去術を施行し,病理結果はS4に12×8mmの肝細胞癌を認める以外には原発巣となり得る病変は認められなかっ...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 45; no. 1; pp. 54 - 59
Main Authors 泉, 貞言, 徳毛, 誠樹, 塩田, 邦彦, 伊賀, 徳周, 鈴鹿, 伊智雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.01.2012
Online AccessGet full text
ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.45.54

Cover

More Information
Summary:肝細胞癌における門脈腫瘍栓は不良な予後因子の一つである.組織学的な門脈浸潤を含めると5cm以下の肝癌においても比較的多くみられるが,2cm以下の肝癌で門脈本幹まで伸展する例は極めてまれである.今回,我々は原発巣12mmでありながら門脈本幹に伸展する肝細胞癌症例を経験した.症例は55歳の男性で,全身倦怠感,食欲低下を主訴に当院受診.腹部超音波検査,CTで左門脈内を中心に本幹へ及ぶ腫瘍塞栓を認めた.腹部血管造影検査では門脈左右分岐部の欠損と同部位の濃染像を認めた.肝左葉+左S1切除,門脈腫瘍栓除去術を施行し,病理結果はS4に12×8mmの肝細胞癌を認める以外には原発巣となり得る病変は認められなかった.術後肝動注FP療法を1年施行した.術後から16か月経過し肝S7,S8に新たな腫瘍性病変を認めてはいるが病勢コントロール良好に経過している.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.45.54