おみやげをつくる資源の越境 滋賀県高島市におけるトチ餅づくりを事例として

本稿は、滋賀県高島市朽木地域を代表するおみやげとして販売される「トチ餅」の材料が、地域の外から調達されているという事例から、おみやげをつくるためのモノの移動の状況を検討し、おみやげ生産をめぐる地域の課題を考察する。朽木において、1980年代のむらおこし事業により販売されるようになったトチ餅は、山の資源と伝統の技術を利用したおみやげとして道の駅や朝市において人気を得ている。しかし、高齢化や獣害、トチ餅の商品化、燃料革命といった複数の要因によって、2012年時点では主要な材料であるトチノミは近隣地域から、加工に用いる灰は朽木から遠く離れた静岡から、それぞれ購入されていた。こうした資源利用の越境した...

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Published in観光学評論 Vol. 6; no. 2; pp. 179 - 190
Main Author 八塚, 春名
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 観光学術学会 2018
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ISSN2187-6649
2434-0154
DOI10.32170/tourismstudies.6.2_179

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Summary:本稿は、滋賀県高島市朽木地域を代表するおみやげとして販売される「トチ餅」の材料が、地域の外から調達されているという事例から、おみやげをつくるためのモノの移動の状況を検討し、おみやげ生産をめぐる地域の課題を考察する。朽木において、1980年代のむらおこし事業により販売されるようになったトチ餅は、山の資源と伝統の技術を利用したおみやげとして道の駅や朝市において人気を得ている。しかし、高齢化や獣害、トチ餅の商品化、燃料革命といった複数の要因によって、2012年時点では主要な材料であるトチノミは近隣地域から、加工に用いる灰は朽木から遠く離れた静岡から、それぞれ購入されていた。こうした資源利用の越境したネットワークがおみやげづくりを支えていることは、過疎・高齢化する山村における現代的なおみやげづくりの在り方として評価できる。しかし他方、福島原発事故後に静岡からの灰が入手できなくなり、地域外からの材料供給における脆弱な側面が明らかになった。以上をふまえ本稿では、現代の山村において、地域の課題に柔軟に対応し、資源利用の技術を継承しながら、あくまで生活の一部としておみやげをつくることが重要だと考察した。
ISSN:2187-6649
2434-0154
DOI:10.32170/tourismstudies.6.2_179