唇顎口蓋裂患児の歯列弓形態について 特に上顎歯列弓形態が下顎歯列弓形態に及ぼす影響について

唇顎口蓋裂患児の上顎歯列弓形態が下顎歯列弓形態へ及ぼす影響を調べることを目的とし,本研究を行った.資料は当教室にて手術を行い,Hellmanの咬合発育段階IICから皿A期までに達した両側性唇顎口蓋裂患児(BCLP)13名,片側性唇顎口蓋裂患児(UCLP)20名,口蓋裂患児(CP)20名,健常児30名の上下顎石膏模型である.検索した結果,以下のことが明らかになった. 1.歯列弓長径と幅径におv・て,上顎では口蓋裂手術群は健常児に比較して有意に小さv・値を示した(BCLPの長径を除く).下顎では,それぞれの裂型に特異的な発育パターンがみられた. 2.歯列弓の対称性において,上顎ではUCLPの乳犬歯...

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Published in日本口蓋裂学会雑誌 Vol. 18; no. 1; pp. 59 - 78
Main Author 新垣, 敬一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本口蓋裂学会 1993
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ISSN0386-5185
2186-5701
DOI10.11224/cleftpalate1976.18.1_59

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Summary:唇顎口蓋裂患児の上顎歯列弓形態が下顎歯列弓形態へ及ぼす影響を調べることを目的とし,本研究を行った.資料は当教室にて手術を行い,Hellmanの咬合発育段階IICから皿A期までに達した両側性唇顎口蓋裂患児(BCLP)13名,片側性唇顎口蓋裂患児(UCLP)20名,口蓋裂患児(CP)20名,健常児30名の上下顎石膏模型である.検索した結果,以下のことが明らかになった. 1.歯列弓長径と幅径におv・て,上顎では口蓋裂手術群は健常児に比較して有意に小さv・値を示した(BCLPの長径を除く).下顎では,それぞれの裂型に特異的な発育パターンがみられた. 2.歯列弓の対称性において,上顎ではUCLPの乳犬歯,第1乳臼歯で非対称性を示した.下顎では口蓋裂手術群,健常児はともに対称性を示した. 3.歯冠軸の頬(唇)舌的傾斜度は,下顎の第1乳臼歯および第2乳臼粛において,それぞれの裂型に特徴的な舌側傾斜がみられた. 4.対咬接触歯数の多い群では,下顎歯列弓の幅径は健常児に比較し有意に小さかったが,対咬接触歯数の少ない群では,健常児に近い値を示した. 5.対咬接触歯数の多い群では,第1乳臼歯,第2乳臼歯において同側上下顎同名歯の歯冠軸傾斜度間と,また上顎の歯列弓幅径とそれに対応する下顎の歯冠軸傾斜度に正の相関関係がみられた. 以上のように上顎歯列弓形態が咬合を介して下顎歯列弓形態に影響を及ぼすことが示唆された.
ISSN:0386-5185
2186-5701
DOI:10.11224/cleftpalate1976.18.1_59