腰椎椎間板ヘルニアに対する椎間板内酵素注入療法における椎間板の水分含有量評価の有用性について MRI検査画像から求められるT2 mappingの有用性

腰椎椎間板ヘルニアの治療法の一つに椎間板内酵素注入療法がある.椎間板内酵素注入療法とは,経皮的に椎間板内にコンドリアーゼを直接注入することにより,椎間板内圧を低下させ,ヘルニアによる神経根の圧迫を軽減させる治療法である.椎間板内酵素注入療法の治療効果判定は,磁気共鳴画像(Magnetic Resonance Imaging:MRI)を用いた画像診断,症状緩和状態のみであり,治療による椎間板内の水分含有量の変化を定量的に評価することは現状行われていない.腰椎椎間板ヘルニアに対する椎間板内酵素注入療法において椎間板内の水分含有量の変化と治療効果の関連性について検討を行った.対象症例は,椎間板内酵素...

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Published in昭和学士会雑誌 Vol. 84; no. 4; pp. 277 - 285
Main Authors 加藤, 京一, 橘高, 大介, 中井, 雄一, 高橋, 俊行, 秋葉, 泰紀, 佐藤, 久弥
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学学士会 2024
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ISSN2187-719X
2188-529X
DOI10.14930/jshowaunivsoc.84.277

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Summary:腰椎椎間板ヘルニアの治療法の一つに椎間板内酵素注入療法がある.椎間板内酵素注入療法とは,経皮的に椎間板内にコンドリアーゼを直接注入することにより,椎間板内圧を低下させ,ヘルニアによる神経根の圧迫を軽減させる治療法である.椎間板内酵素注入療法の治療効果判定は,磁気共鳴画像(Magnetic Resonance Imaging:MRI)を用いた画像診断,症状緩和状態のみであり,治療による椎間板内の水分含有量の変化を定量的に評価することは現状行われていない.腰椎椎間板ヘルニアに対する椎間板内酵素注入療法において椎間板内の水分含有量の変化と治療効果の関連性について検討を行った.対象症例は,椎間板内酵素注入療法後にMRI検査を実施した患者32症例と腰椎椎間板ヘルニアを有し,未治療でMRI検査を実施した患者28症例の合計60症例,67椎間板を対象とした.腰椎椎間板内のT2値の測定は矢状断像を用いてL4/5,L5/S1椎間板の前方線維輪,前方線維輪移行部,髄核,後方線維輪移行部,後方線維輪の測定を行い,治療群と未治療群のT2値の比較を行った.また,治療群における治療前後でのJOAスコアの比較を行い,治療前後でのJOAスコア差と髄核のT2値との関係を求めた.また,JOAスコアの改善率におけるT2値のカットオフ値を算出した.治療群と未治療群の髄核のT2値を比較すると治療群で有意に髄核のT2値は低下していた.治療後のJOAスコアは治療前と比較してスコアが有意に高く,症状の改善が見られた.治療前後でのJOAスコア差と髄核のT2値との関係では負の相関が見られた.JOAスコアの改善率におけるT2値のカットオフ値はROC解析の結果,L4/5椎間板でAUC=0.782,カットオフ値54.6ms,感度72.7%,特異度80.0%,L5/S1椎間板ではAUC=0.893,カットオフ値56.8ms,感度85.7%,特異度100%であった.腰椎椎間板ヘルニアに対する椎間板内酵素注入療法において,椎間板内のT2値の変化は,治療効果判定の一助となることが示唆された.
ISSN:2187-719X
2188-529X
DOI:10.14930/jshowaunivsoc.84.277