期間衡平性をめぐる一考察 米国公会計における規制事業取引の収益認識を題材として

米国公会計において取り入れられている期間衡平性は,政府の市民に対する広範なアカウンタビリティの重要な一部を構成する概念であるが,同時に現在世代の将来世代に対するアカウンタビリティも構成する概念である。本稿は,政府の財務報告が,このような2つのタイプのアカウンタビリティを構成する期間衡平性の評価に資する情報を提供するための会計基準設定にあたっての留意点を検討し,以下を明らかにした。 政府の財務報告が2つのタイプのアカウンタビリティを構成する期間衡平性の評価に資する情報を提供するための会計処理は,互いに相反する関係にない。現在世代が政府に対して支払った負担が,政府から提供されたサービスを通じて現在...

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Bibliographic Details
Published in会計検査研究 Vol. 66; pp. 47 - 60
Main Author 栗城, 綾子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 会計検査院 26.09.2022
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ISSN0915-521X
2436-620X
DOI10.51016/kaikeikensa.66.0_47

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Summary:米国公会計において取り入れられている期間衡平性は,政府の市民に対する広範なアカウンタビリティの重要な一部を構成する概念であるが,同時に現在世代の将来世代に対するアカウンタビリティも構成する概念である。本稿は,政府の財務報告が,このような2つのタイプのアカウンタビリティを構成する期間衡平性の評価に資する情報を提供するための会計基準設定にあたっての留意点を検討し,以下を明らかにした。 政府の財務報告が2つのタイプのアカウンタビリティを構成する期間衡平性の評価に資する情報を提供するための会計処理は,互いに相反する関係にない。現在世代が政府に対して支払った負担が,政府から提供されたサービスを通じて現在世代が享受した便益に見合っているかどうかの判断をゆがめてしまうような会計処理は排除されなければならない。 一方,政府は広範なアカウンタビリティを負っており,それには期間衡平性のみならず,中長期的な観点が必要とされる財政状態にかかるアカウンタビリティも含まれる。政策は複数年度にわたるものが多く,中長期的な財政状態の維持または改善の観点から行われている。そこでは,基本的には単年度を対象とする期間衡平性のみでは政府がアカウンタビリティを十分に果たすことは難しく,むしろ,期間衡平性の累積的な影響,すなわち政府のこれまでの行政運営の結果を示す,財政状態報告書の純資産の複数年度にわたる変動の通算,および純資産の変動にかかる将来の予測を補足情報として提供することによって,アカウンタビリティを果たすことが可能となる。そこで,政府の財務報告は,財務業績報告書で期間衡平性の評価に資する情報を提供するとともに,財政状態報告書の純資産の複数年度にわたる変動と政策との関係を詳細に説明する必要がある。
ISSN:0915-521X
2436-620X
DOI:10.51016/kaikeikensa.66.0_47