関節円板障害・変形性顎関節症に対する運動療法 術者が行う運動療法の考え方と手技

顎関節症の初期治療法は,可逆的な保存治療法,特に運動療法が第一選択として注目されている。整形外科領域では,運動療法は重要な保存治療法として確立しているが,顎関節領域では,さらなる検証が必要とされている。今回は,関節円板障害と変形性顎関節症症例に対し,その病態に応じて術者の行う運動療法すなわち顎関節可動化療法の考え方とその手技について解説した。さらに,関節機能障害度分類により,中等度以上の障害を認めた症例に対し,初診時と初回再来時に顎関節可動化訓練療法とセルフケアとしての自己牽引療法を一つの運動プログラムとして捉え,それらを施行した場合に,その臨床症状(最大開口域,安静時痛,開閉口時痛,咀嚼時痛...

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Published in日本顎関節学会雑誌 Vol. 32; no. 3; pp. 103 - 112
Main Author 田口, 望
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本顎関節学会 20.12.2020
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ISSN0915-3004
1884-4308
DOI10.11246/gakukansetsu.32.103

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Summary:顎関節症の初期治療法は,可逆的な保存治療法,特に運動療法が第一選択として注目されている。整形外科領域では,運動療法は重要な保存治療法として確立しているが,顎関節領域では,さらなる検証が必要とされている。今回は,関節円板障害と変形性顎関節症症例に対し,その病態に応じて術者の行う運動療法すなわち顎関節可動化療法の考え方とその手技について解説した。さらに,関節機能障害度分類により,中等度以上の障害を認めた症例に対し,初診時と初回再来時に顎関節可動化訓練療法とセルフケアとしての自己牽引療法を一つの運動プログラムとして捉え,それらを施行した場合に,その臨床症状(最大開口域,安静時痛,開閉口時痛,咀嚼時痛,日常生活支障度の5項目)について評価した。その結果,無痛最大開口域,開閉口時痛,咀嚼時痛,日常生活支障度において有意な改善を認めた(p<0.05)。このことは,これら運動療法が,関節滑液を循環させ,関節腔を拡大し関節可動域を改善したものと考えられる。したがって,これら運動療法が,関節円板障害(とくに非復位性関節円板障害)と変形性顎関節症症例に伴う諸症状を比較的短期間に軽減させる有効な保存的治療法であることが示唆された。
ISSN:0915-3004
1884-4308
DOI:10.11246/gakukansetsu.32.103