くも膜下出血と脳梗塞を同時期に発症した脳動脈解離症例の検討

『はじめに』 脳動脈解離は比較的若年患者にもみられる脳卒中であるが, その臨床型はくも膜下出血で発症する場合または, 脳梗塞で発症する場合など多様である. 近年の画像診断の向上により, 脳動脈解離症例を経験する機会が増えており, その病態を理解することは急務である. しかし, 脳動脈解離全体の中でくも膜下出血発症例と脳梗塞発症例では病態が異なり, それゆえに予後や治療法も異なるため別々に検討されてきた. くも膜下出血発症例に対しては, 再出血を予防する目的で外科的または血管内治療の手技を用いて早期の治療を行うことが望まれる一方で, 脳梗塞を含め虚血発症例は抗血小板剤投与などが考慮される. その...

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Published in脳卒中の外科 Vol. 38; no. 5; pp. 313 - 317
Main Authors 川口, 奉洋, 高沢, 弘樹, 西村, 真実, 西嶌, 美知春, 米澤, 慎悟, 堀, 恵美子, 金森, 政之, 佐々木, 達也
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本脳卒中の外科学会 2010
日本脳卒中の外科学会
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ISSN0914-5508
1880-4683
DOI10.2335/scs.38.313

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Summary:『はじめに』 脳動脈解離は比較的若年患者にもみられる脳卒中であるが, その臨床型はくも膜下出血で発症する場合または, 脳梗塞で発症する場合など多様である. 近年の画像診断の向上により, 脳動脈解離症例を経験する機会が増えており, その病態を理解することは急務である. しかし, 脳動脈解離全体の中でくも膜下出血発症例と脳梗塞発症例では病態が異なり, それゆえに予後や治療法も異なるため別々に検討されてきた. くも膜下出血発症例に対しては, 再出血を予防する目的で外科的または血管内治療の手技を用いて早期の治療を行うことが望まれる一方で, 脳梗塞を含め虚血発症例は抗血小板剤投与などが考慮される. その中で, くも膜下出血と脳梗塞を同時期に発症する例はきわめて珍しく, これまでのところ数編の症例報告が認められるのみである1)3)11)12)14). いずれも転帰不良であり, 脳動脈解離症例の中でも重症型であると考えられているが, 治療法について定まった見解が得られていない9).
ISSN:0914-5508
1880-4683
DOI:10.2335/scs.38.313