ヒト中絶胎児組織の研究利用における提供女性への支援の必要性 看護の視点からの考察
ヒト中絶胎児組織は,増殖能が高いという特徴から,ES細胞やiPS細胞等,多能性幹細胞の登場以降も,新型コロナワクチン等感染症のワクチン開発,ヒト化マウスの作成やヒトの発生研究等の基礎的研究に多く用いられ,必要不可欠なマテリアルとされている。胎児組織は主として望まない妊娠をした女性が受ける「人工妊娠中絶(以下,中絶)」によって得られるものであることから,提供する女性が,提供したことで新たに傷を負うことや,後々後悔の念で苦しむことは避けなければならない。実際に提供した女性はどのような心理状態となり,それに対してどのような支援がされているのか,海外からのわずかな調査報告はあるものの,日本からの報告は...
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          | Published in | 医療と社会 Vol. 35; no. 2; pp. 187 - 199 | 
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| Main Authors | , | 
| Format | Journal Article | 
| Language | Japanese | 
| Published | 
            公益財団法人 医療科学研究所
    
        31.07.2025
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| Subjects | |
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| ISSN | 0916-9202 1883-4477  | 
| DOI | 10.4091/iken.2025.002 | 
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| Summary: | ヒト中絶胎児組織は,増殖能が高いという特徴から,ES細胞やiPS細胞等,多能性幹細胞の登場以降も,新型コロナワクチン等感染症のワクチン開発,ヒト化マウスの作成やヒトの発生研究等の基礎的研究に多く用いられ,必要不可欠なマテリアルとされている。胎児組織は主として望まない妊娠をした女性が受ける「人工妊娠中絶(以下,中絶)」によって得られるものであることから,提供する女性が,提供したことで新たに傷を負うことや,後々後悔の念で苦しむことは避けなければならない。実際に提供した女性はどのような心理状態となり,それに対してどのような支援がされているのか,海外からのわずかな調査報告はあるものの,日本からの報告は見当たらない。そこで,どのような支援が必要であるのか,先行研究をもとに看護の視点からの考察を試みた。日本では,中絶自体をタブー視する社会的風潮もあり,また医療現場においても十分な支援が行われていない状況であった。医療現場において中絶を受ける女性の特徴を踏まえた支援を充実させることに加え,研究者側又は学会等における「中絶を受ける女性の心理状態を理解し,その女性の状況や反応に合わせ,胎児組織の利用研究について説明できる者(胎児組織研究コーディネーター)」の養成,胎児組織研究コーディネーターと医療現場との連携(対象者の選定,説明時に看護者が同席することとその後のフォロー,振り返り等),術後も含めたフォロー体制の整備の必要性が確認された。 | 
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| ISSN: | 0916-9202 1883-4477  | 
| DOI: | 10.4091/iken.2025.002 |