明治期における耕地整理法の全面改正の背景と意義 技術的・資源的制約による区画整理事業から灌漑排水事業への全面転換

区画整理事業を推進するために制定された耕地整理法は,明治期における技術的・資源的な制約下で,灌漑排水事業を主目的とするものへと全面転換された.農業生産の機械化が未発達な段階では,労働ピークの分散が零細分散錯圃によって図られており,分散錯綜した圃場の集約化は困難であった.また,区画整理は圃場毎の水使用量を増加させるため,近世以来の水資源限界のもとでは零細分散錯圃と連結した田越し灌漑を改めることは困難であった.かかる制約のもとで農業生産力の増強を図るためには,地域的な水制御を担保する伝統的な農耕社会に立脚する必要があり,耕地整理法は集落の共同性に依拠した灌漑排水事業へと転換されていった....

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Published in農業農村工学会論文集 Vol. 92; no. 2; pp. I_187 - I_194
Main Authors 大江, 靖雄, 野々村, 圭造
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 農業農村工学会 2024
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ISSN1882-2789
1884-7242
DOI10.11408/jsidre.92.I_187

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Summary:区画整理事業を推進するために制定された耕地整理法は,明治期における技術的・資源的な制約下で,灌漑排水事業を主目的とするものへと全面転換された.農業生産の機械化が未発達な段階では,労働ピークの分散が零細分散錯圃によって図られており,分散錯綜した圃場の集約化は困難であった.また,区画整理は圃場毎の水使用量を増加させるため,近世以来の水資源限界のもとでは零細分散錯圃と連結した田越し灌漑を改めることは困難であった.かかる制約のもとで農業生産力の増強を図るためには,地域的な水制御を担保する伝統的な農耕社会に立脚する必要があり,耕地整理法は集落の共同性に依拠した灌漑排水事業へと転換されていった.
ISSN:1882-2789
1884-7242
DOI:10.11408/jsidre.92.I_187