オルポートとバーノンの価値志向性テストによる抽出因子の評価に関する研究 某看護学生を対象とした実証的研究より
日本版のオルポートとバーノンの調査表を用い, 看護学専攻の短大生306人と大学生92人について集合法による調査を実施し, オルポートとバーノンのスケールによる原テストの平均値を比較検討した.また, 吉野が考案した価値志向形および価値志向の方形表, さらに潜在志向について短大生と大学生の価値志向の比較を行った.その結果, 価値志向の平均値において, 原テスト, 潜在志向ともに短大生と大学生との間に「社会性」と「理論性」で有意差が認められた.各カテゴリー間では短大生, 大学生ともに「社会性」の平均値が最も高く, 「政治性」および「経済性」の値は低かった.さらに, 短大生は「宗教性」が- (マイナス...
Saved in:
| Published in | 昭和医学会雑誌 Vol. 56; no. 4; pp. 410 - 422 |
|---|---|
| Main Authors | , , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
昭和大学学士会
28.08.1996
|
| Subjects | |
| Online Access | Get full text |
| ISSN | 0037-4342 2185-0976 |
| DOI | 10.14930/jsma1939.56.410 |
Cover
| Summary: | 日本版のオルポートとバーノンの調査表を用い, 看護学専攻の短大生306人と大学生92人について集合法による調査を実施し, オルポートとバーノンのスケールによる原テストの平均値を比較検討した.また, 吉野が考案した価値志向形および価値志向の方形表, さらに潜在志向について短大生と大学生の価値志向の比較を行った.その結果, 価値志向の平均値において, 原テスト, 潜在志向ともに短大生と大学生との間に「社会性」と「理論性」で有意差が認められた.各カテゴリー間では短大生, 大学生ともに「社会性」の平均値が最も高く, 「政治性」および「経済性」の値は低かった.さらに, 短大生は「宗教性」が- (マイナス) であり, 大学生は+ (プラス) であることが示された.このことは短大生は, 宗教に対して相対的な価値観が低いことを意味し, 逆に, 大学生は相対的に価値観が高いことを示している.価値志向の方形表においては, 短大生および大学生の価値志向の特性が特定の行および列に集中し, その分布もほぼ共通していたことが明らかにされた.次に, 集中した因子を抽出して詳しく調べると, 原テストにおいて共通する志向形は, 「政治性」が- (マイナス) で「社会性」が+ (プラス) であることが明らかになった.このことは人間関係が気にかかり, 力で意志を通すことをよしとしないという価値志向であることを意味している.同様に, 抽出因子の潜在志向においては, 「社会性」の+ (プラス) だけが共通としてあげられた.「社会性」が+ (プラス) とは価値志向において人間愛が中心であり, 他者への献身に価値をもとめ, 交わり・共感・連帯感を重んじるタイプである.以上, 短大生と大学生の看護系学生を対象に価値志向に関する調査・分析を行った結果, 短大生, 大学生に共通した価値志向の特性が把握された.現在における価値志向を把握することは, 個人や集団に対する対応の仕方や教育などの場における対象の特性を知る意味で, 非常に重要な事柄であると考える.また, これら価値志向の変化にかかわる要因を分析することは, 心理学や人間科学という分野においてもきわめて重要であると考える. |
|---|---|
| ISSN: | 0037-4342 2185-0976 |
| DOI: | 10.14930/jsma1939.56.410 |